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2007-08-11 Sat 14:09
新しく小説書いみました

激闘
一応、賞でいーとこまで行った作品なので読む価値はあるかと……たぶん。
小説目次(下線テキストがリンクになってます)

最初から又は過去の節を読む方はこちらへどうぞ
第一典へ(第一節、第二節目次)


第二典へ(第三節、第四節目次)

第三典へ(第五節目次)


第一節異録「声なき鎮魂歌」 (最新節!)
お待たせしました(?)
このお話で第一節の明かされなかった過去をつまびらかにしていきます。
消化不良気味でしたからねぇ;;
過去の記事を見たい方は下へ


↓本編最新小節一覧↓(常連さんいつもありがとうございます)
● 第一節異録1 姉妹(しまい)  ● 第一節異録2 枢機卿(すうきけい)

● 第一節異録3 食卓(しょくたく)  ● 第一節異録4 奇跡(きせき)

● 第一節異録5 熱病(ねつびょう)  ● 第一節異録6 秘術(ひじゅつ)

● 第一節異録7 宴・幕開け(うたげ・まくあけ)  ● 第一節異録8 宴・幕引き(うたげ・まくひき)

● 第一節異録9 封印(ふういん)  ● 第一節異録10 名前(なまえ)

● 第一節異録エピローグ 声なき鎮魂歌(サイレント レクイエム) new!

―――――――――――――――――――――――――――――
毎週土曜夜新小節up予定!
今のところアンジェリカ本編はここまで。

――暗黒の時代を白い炎が走る――
毎週土曜夜更新予定!


闇
↑トップページに載ってるのは全てくろのさんから頂いた画像♪
 こんな感じの小説です;
くろのさんからの頂き物画像集へGO!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジャンク小説トップへ (無題 第二話10まで掲載;)
ドタバタとしたバトルありコメディーありのやっぱりファンタジー小説;
息抜きにはいいかも;
少しの間連載再開;;;


銀蛇のヘボ画像集へ;;;

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忙しい方やPCでの閲覧が出来ない方のために「野いちご」さんのほうで携帯小説ページを立ち上げました。
↓リンクになっております。

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アンジェリカ 第一節① 邂逅(かいこう)
2007-08-11 Sat 14:23
序節

人気のない街道。

黒い霧が渦を巻いて立ち上り、やがて空に溶けるようにして消えていく。

辺りを包むのは静寂と血の色の黄昏……

その中で一人の男がただ黒い霧が消えゆくのを睨み据えていた。

異様な風体の男だ。

身長はかなり高く、その半身をマントで覆い、背に鎖で雁字搦めにされた棺らしき箱を背負っている。

どこか不吉さを感じさせるその姿は、仄暗い夕日に染め上げられ、さらに不気味さを増していた。

やがて黒い霧は消え、生暖かい風が男の長い髪と額に巻いている布の端を微かになびかせる。

「……臭うな」

男は風上に目をやり呟く。

「休む暇も無しか……まあ、それもいい」

男は鋭い眼光はそのままに口元だけで笑みを浮かべる。

「立ち止まるのは性に合わねえ……」

男はその身を翻し歩き始める。

その背は遠ざかり、やがて紅の闇に消えていった。














古(いにしえ)の昔

世は戦火で覆われ、

人々は貧困と病魔にあえぎ

影に腐敗が澱(よど)み

闇に強大な魔が潜む

暗黒の時代があった……

人々はその中で何を思い生きたのか。

これは歴史の闇に埋もれた

語られぬものたちの足跡(そくせき)……










     
    






「アンジェリカ」             


















第一節 朽ちた翼

暗い部屋の中、私は体の自由を奪われ鎖で床に貼り付けられていた。

 周囲にいくつか配された蝋燭(ろうそく)の淡い灯火(ともしび)が闇の密度をいくらか緩和(かんわ)しているものの、その明かりの外には深い闇が広がっている。

 床にはよく見えないが血のようなもので幾何学的(きかがくてき)な図形と意味のわからない文字が書かれており、動けないことも合わさって私の恐怖心を煽(あお)る

 コツ

 頭上から聞こえた音に私は肩を竦(すく)ませてそちらを見ると、そこにはいつの間にか二人の男女が立っていた。

 どちらも普通の服を身に着けている、しかし、顔だけなぜか靄(もや)のようなものがかかっていてよく見えない。

 男が両手を振り上げる、その手には手斧が握(にぎ)られていた。

 そして、斧が私めがけて振り下ろされる。

 バッ

 私はベッドから飛び起き、荒く息を吐き出す。

「……また、あの夢……」

私は乱れた髪を掻(か)き揚(あ)げ、呟く。

全身に漂う倦怠感(けんたいかん)に軽い頭痛、悪夢の後はいつもこうだ。

そして、同じ夢という確信はあっても決まって内容は思い出せない。

私は体に鞭打ってベッドから起き上がる。

隣のベッドに目をやると、一人の少女(といっても私と同い年なのだが)が気持ちよさそうに寝息を立てている。

「まったく、のん気なんだから……」

 私は少し恨めしい気持ちで呟き、窓まで歩いていく。

 窓を開くと同時に、差し込んでくる朝日に私は目を細める。

 太陽はもう昇っていた。

 私はその様を少しの間見ていたが、すぐにあることに思い当たる

「ち、遅刻だっ、タニア早く起きて、遅刻よっ、タニアってば」

 私は慌てて少女の名を連呼して彼女の体を揺さぶる。

「う~ん、もうあとちょっと……」

「そのちょっとがないのっ、私、先に着替えるからねっ」

私は忙しく着替えを始める。

黒い飾り気のない服を纏(まと)い、やはり黒いレースを頭に被り、首に四枚の翼を象った聖印(せいいん)のペンダントをかける。

「あー、何でこんなに日が昇ってるのっ!?、何で早く起こしてくれないのよケイト」

ようやく起きたタニアが私に対し非難の声を上げる。

「私も寝坊したのよっ、タニアが起きないのも悪いんでしょ、わたし、先に行くからね」

 私は言い放ち部屋を出る。

「ちょっ、ちょっと待ってよケイトっ、お願い!」

 タニアの呼び止める声に、私は仕方なく立ち止まる

「早く着替えてよっ」

 私はタニアをせかした。

①-1
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 
 タニアが着替え終わった後、急いで聖堂に向かうと、まだ朝のミサは続いていた。

 私たちと同じ服装、同じ年頃の娘たちが居並び、奏でる聖歌が聖画やステンドガラスで彩られた聖堂に流れる中、私とタニアはこっそりとその列に加わり、何食わぬ顔で歌い始める。

私達の目の前には指揮を執っている女性とその後ろに坐(ま)す四枚の翼を背に持つ女性の像。

四翼の聖天使…彼女はどこか物憂げな表情で私達を見下ろしている。

私は歌いながら視線を天井に移す。

そこには円形の壮麗なステンドグラスが広がっていた。

これを始めて見たとき私は感動した。

今でもすごいと思うし、これを見る度にここが聖地なのだと実感する。
この大ステンドグラス、昼間は一般に公開されており、イスタの大聖堂の名物兼象徴となっている。

 そして、聖歌が終わった後、一礼して全員が聖堂を出て行く。

「シスター・ケイト、シスター・タニア、いらっしゃい」

そんな中、聖歌の指揮を執っていた女性が私とタニアの名を呼ぶ。

 私とタニアは顔をしかめて女性の所に行き、俯いて上目遣いで彼女を見る。

 気難しそうな顔をした三十台前半の女性で、服装は私たちと同じ上から下までほぼ黒ずくめだ。

「あなたたちは少し修道女としての自覚が足りないようですね・・・時間というのは大切な規律です、最初ですから大目に見ますが、これからはこういうことのないように」

「すみません、シスター・マリアベル」

 私とタニアは素直に彼女に頭を下げる。

 シスター・マリアベルは私たち見習いシスターの教育や世話を受け持っている。

 いわば担任の教師に当たる人物だ。

「さ、食事です、早く食堂に行きなさい」

シスター・マリアベルに促され、私たちは食堂へとそそくさと歩いていく。
「怒られちゃったね」

タニアが話しかけてくる
「仕方ないよ、私たちが悪いんだし」

 私は苦笑を浮かべた。

 私の名前はケイト、ここ、四翼聖教(よんよくせいきょう)の三大聖地の一つ、イスタの大聖堂で修道女見習いをやっている。

 ここにきたのは一ヶ月ほど前で、まだここの生活には慣れていない。
 特に気候条件に関してはかなり参っている。

 イスタは砂漠に位置し、昼夜の寒暖差がかなり激しい。

 それに言葉にも私は苦しんでいる。

 ここでは公用語(コモン)という広く一般に使われている言葉で話さなければならないのだが、私は元々地方にいたためそこの訛りが取れない。

 私は元々孤児で、小さな町の教会兼孤児院に身を寄せていた。

 タニアも同じ教会の出身でやはり孤児だ。

 私たちは教会で清掃や家事を手伝い、同じ孤児たちの面倒を見て生活していたが、十七歳で教会からは出て行かなくてはならなかったので、今年で十七歳を迎える私とタニアはどうするか途方にくれていた。

 外に親戚などはおらず、働くつてもない、そんな折に教会の神父様から思いもしない提案があった。

 それは聖地イスタで修道女見習いとして修行をしてはどうだろうかというものだった。

 聖地イスタで修行できるというのは名誉なことだ。

 その過程をこなせば確実に聖職に就けるため、私たちは喜んでその提案を受けた。

 そして一ヶ月前、この聖地イスタに足を踏み入れた。

 それが私たちがここに来た経緯(いきさつ)だ。


①-2
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 食堂では、もう私たち以外は全員席についていた。

 私とタニアも忙しく席に座る。

 少ししてシスター・マリアベルも現れ、ゆっくりと椅子に腰を下ろし瞑目(めいもく)して顔の前で手を組む。

「…我らが、今日の糧を得られることを聖天使に感謝し、今日一日我らが健(すこ)やかであらんことを…」

 シスター・マリアベルが祈りを捧げると、全員が顔の前で手を組み目を瞑(つむ)る。

 数秒後

「さあ、いただきましょう」

 シスター・マリアベルが言うと食事が始まる。

 食事の内容はいたって質素だ。

 パン一つと野菜のスープ、そしてコップ一杯のワイン。

 ワインといってもアルコール度数は低く、これで酔えるとなると相当酒に弱いことになる。

 私はまずワインで口を湿らせパンを口に運ぶ。

 食堂の中は食器が立てる微かな音以外は何も聞こえない。

 食事は静かに摂るというのがここのしきたりだ。

(孤児院のときはもっと食事は楽しかったんだけど……)

 私は教会の孤児院のことを思い出す。

 食事となれば我先にと子供たちが寄ってきて、にぎやかに食事をしたものだ。

 喧嘩も多かったが楽しい日常の風景だった。

 食事の時間が終わり、私とタニアは自室にいったん戻る。

「ケイト、次ってなんだったっけ?」

「聖書の写し」

 タニアの問いに私は答え、分厚い本を手に取る。

「げー、面倒くさいのよね、あれ」

 タニアが顔をしかめながらも私と同じ本を手に取る。

「文句言わない、さ、行くよ」

 私はタニアを伴って部屋を出る

「いいよね、ケイトは、なんでもそつなくできてさ、孤児院でも秀才って言われてたし、見た目だって私よりずっといいしさ」

 廊下を歩いているとタニアが話しかけてくる。

 孤児院で私たちは読み書きを教わり勉強することが出来た、それは非常に幸運なことだったと思う。

 世の中には勉強はおろか読み書きが出来ない人々が沢山いるのだ。

「そんなことないよ、私不器用だし、頭もそんなにはよくないよ、見た目だってそんな言うほどじゃあ…」

 私は素直な自分への感想を口にする

「そんなこと言ったら私はどうなっちゃうのよ…ほんとに私がこんなところでやっていけるのかって今でも不安だし…」

 タニアがため息混じりに言葉を吐き出す。

「大丈夫、なんとかなるって」

 わたしはタニアの背をぽんと軽く叩き、笑う。

「そうだといいけど……」

 そんな話をしているうちに目的の部屋に着く。

 部屋に入って少しして、教師が分厚い本を手押し車に載せて配って回る。

 私は配られた本と自分の持つ本を開き、ペンを握って配られた本の内容を自分の本に写し始める。

 聖書の写本、この作業の目的は大きく二つある、一つは聖書の内容を理解すること、もう一つは自分自身の聖書を作ることだ。

聖書は買うことももちろんできる、印刷技術がないわけではないのだからそのほうがいいのかもしれないが、ここでは白紙の本が渡され、教会が聖書を貸し出し、自分の聖書を自分で作るのだ。

「あ、間違えた……」

 タニアが小声で言って渋面を作る。

私は少し吹きそうになるが、それを押さえて写本に集中した。

 写本の時間が終わり、少しの自由時間、タニアは思い切り伸びをする。

「う~ん、疲れたぁ、肩こるのよね、これ」

 タニアは息を吐き出して肩を回す。

 今まで静まり返っていた部屋も、今はお喋りの声で埋め尽くされている。

 昼休みの三十分を含めても自由時間は短い、やはり全員抑圧されているのだ。

 だが、私はこんなときでも少し落ち着かない、ここに来てから妙な感じがするのだ。

 まるで、何者かに見られているような……

「きゃっ」

 突然どこからか声が上がる

 私がそちらに目を向けると同僚の一人が立ち上がって顔を引きつらせている

 タニアがそちらに歩いていき彼女の目線の先を覗き込む

「なあんだ、また蠍(さそり)か」

 タニアは言うや否や近くの椅子の足で蠍を押しつぶし。尾を摘んでゴミ箱に捨てて私の元に戻ってくる。

「ここってよく蠍出るねー」

 タニアは笑う。

私はタニアのこういう所についていけないときがある、おおらかというか、神経が図太いというか……

「でもケイト、今日もそうなんでしょ、たまに見るっていうあの夢…そのときしかないもんねケイトが寝坊するなんて…やっぱりその夢ケイトの過去に関係あるんじゃないかな……」

 タニアの言葉に私は少し反応する。

 私は十年前以前の記憶がない、ある町で名前以外何も分からずフラフラとしていたところを兵隊に保護され、その後に育った教会に引き渡されたのだ。

「……そう……なのかな」

 私はあの夢の感覚を思い出し身震いする。

「ご、ごめん、ヤなこと思い出させちゃった?」

「ううん、大丈夫」

 気遣ってくれるタニアに私は笑みを浮かべて首を横に振る。

「さ、次は清掃ね、行きましょ」

「中庭だったけ……あそこ広いんだよね…おまけに暑いし。」

タニアがまたうんざりとして言った。

①-3
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



中庭の掃除は私とタニアを含め六人で担当している。

こういった仕事も見習いがやることになっている。

 一週間ごとに掃除の場所は変わることになっており、場所によって人数も変わる。

 基本的にルームメイト二名で行動するのだが、このときは他の部屋の同僚も一緒になる。

 彼女達と話しながら中庭につく。

 吹き抜けから砂漠の強い日差しが降り注いでいる。

 その中でなお瑞々しい緑と、咲き乱れる花々がその美しさを競っている。

 花達がその身を揺らすと、花弁が舞い散り吹き込んできた風を彩った。

息を呑むほどに美しい光景だったが、その感動はそれを大きく上回る異質なものの存在で打ち消された。

「棺(ひつぎ)……?」

 私は呟いた。

 目に入ってきたものは私の言葉通り鎖でがんじがらめに巻かれた棺だった
 それを背負っている男も十分に目立つ、遠目から見ても背はかなり高く、棺で視界が遮られているものの、その服装はどうやら・・・白尽くめの旅装束ようだった。

 白尽くめの旅装束は死体にしか用いない、穢(けが)れなき白をまとい聖天使の下に旅立つという意味があるからだ。

「なんか、やばそうだよ……」

 タニアが少し下品な物言いをして私の腕にすがる

「人、呼んでこようか……」

他の部屋の娘が言う。

私は、意を決してタニアの手を解き一歩踏み出す

「ケイト、危ないよ、人を呼ぼうっ!」

 タニアが大声を出したため、男がこちらに振り向く。

服装はやはり白尽くめだった、白いマントで左半身を覆っており、さらに髪の色は白に近い銀。

顔つきはややきつい印象だが端正で、透き通る様な白い肌に空色の瞳・・・

身に纏うもので白でないのは、棺と額に巻いている赤い布くらいだ。

場の全員が思わず息を飲む。これほどにインパクトのある外見の生きた人間を見るのは恐らくここにいる全員が初めてだろう。

「俺に何か用か?」

 だが、端正な顔つきとは裏腹に言葉は少し、いや、かなり汚いといえた。

 しかし、私の喋る公用語のように訛りはなく、いたって流暢(りゅうちょう)だ。

「……ここは、一般の方が立ち入れる場所じゃないんですが……」

 私は勇気を振り絞(しぼ)って声を出す。

 こんな男に襲いかかられたら、この場にいる全員でも止められないだろう。

「ほう、そいつは気がつかなかったな、立派な庭だったんでつい、な」

 男は興味もなさそうに庭を一瞥し、私の顔を見る

「それよりあんた、もしかして……」

 男は言葉を途中で切り意味深げな笑みを浮かべる

「いや、なんでもない……じゃあ、お呼びでないようだからお暇するか、悪かったな」

 男は言って少ししゃがみ、そして跳ぶ。

 男は宙を舞い中庭に聳(そび)え立つ壁の上に着地し、そのまま姿を消した。

「嘘でしょ……」

 誰かの声が耳に入ってくるが私は呆然と男が消えた壁の上を見ていた。

(あの人……どこかで……?)


次へ ●第一節② 失踪(しっそう)

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アンジェリカ 第一節② 失踪(しっそう)
2007-08-11 Sat 14:30
その日の夜、私たちは礼拝堂に集められた。

「今日、シスター・アンの行方が分からなくなりました……」

シスターマリアベルが深刻な顔をして告げる。

 ざわざわと一同から声が上がる

 アンといえば中庭の清掃のとき一緒にいた一人だ。

「静かに、今捜索を行っていますが、情報が得られていません、そこでシスター・アンを見たという方、または不審な人物を見た、という方は私に届け出るように」

 マリアベルはいって解散するよう私たちに言う。

「シスター・マリアベル」

私はマリアベルに声をかける、タニアも一緒だ。

「どうしたんです?」

「私たち朝の清掃のとき変な人を見たんです」

 タニアが言う

「詳しく教えてもらえますね?」

 シスターマリアベルの問いに、私とタニアはあの白尽くめの男の話をする。

「……そうですか、でも、そういう時、これからは人を呼ぶようになさい、さ、今日はもう休みなさい、また寝坊してもいけませんからね」

 言ってシスターマリアベルは珍しく笑みを見せた。

私たちは、彼女の言いつけに従い、その日は床についた。

翌日、朝のミサにもちゃんと出席し普段どおり朝食を摂る。

 しかし私の頭の中は昨日の白い男のことでいっぱいだった.

(あの人とは、どこかで会ったことがある)

 なぜか私は確信的にそう思っていた。

そして私は考えていた。

 あの男と会ったことがあるとすれば、それがいつ、どんな時かを、しかし、いくら考えても思い出せない。

 夢の内容と同じように記憶に靄(もや)がかかる。

「……ト……イト、ケイトッ!」

 タニアの呼びかけに私は我に返る.


「早く行かないと遅れるよ」

タニアに言われ辺りを見回すと食堂にはもう誰もいなかった。

私とタニアは慌てて部屋に戻り、用意をして次の授業の部屋に向かう。

次は応急処置や薬草についての授業だ。

地震などの災害があった場合、教会は避難所としての役割も果たす、そういったときに怪我人の応急的な処置なども私たち修道者の重要な仕事の一つだ。

 実際、このイスタの教会にも有事の際に使う薬草や包帯、家を失った人たちに振舞う食糧の備蓄や毛布が大量にある。

私はこの授業が得意だ。

だが、今日はまったく身が入らない、教師の声も右から左へと抜けていくようだ。

そんなとき、私は何かの気配を感じる、あのいつも見張られているような感覚…それが一瞬 強くなったような気がした。

私は反射的に後ろを向くが、やはり何もいない。

「シスター・ケイト、集中なさい」

「す、すみません」

 教師の言葉に私は慌てて向き直り謝る

 辺りから少し笑い声が聞こえ、私は顔を赤くする.

 結局、この時間は最後まで集中できなかった。

「どうしちゃったのよケイト……気分悪いなら医務室行ったほうがいいよ」

 休み時間、タニアが心配そうに声をかけてくる

「うん…ちょっとね、でも大丈夫」

 私は言って俯(うつむ)く

「ケイトはいつもそういって無理するんだから……どうしても調子悪いんなら言ってよね、無理しちゃだめだよ」

「うん……」

 私は少し笑って頷く

 タニアの優しさが嬉しかった。

「ねぇ、タニア……」

「なに?」

 私の呼びかけにタニアが訊いてくる

「ここに来てからさ、変な感じがしない……?、誰かに見られているみたいな……」

 私は思い切ってずっと感じていた違和感についてタニアにたずねる。
 
タニアは少し難しい顔をして
「……よくわからないけど……ケイトは昔からそういうことに敏感だよね、たぶん教会にいたときより人も増えたし、身の回りもすごく変わったから、そのせいだよ」

「そう……かな?」

 タニアの言葉に私は呟く

「そうだって、ケイトって何気に神経質なんだから、少し私みたいに大らかになった方がいいよ」

 タニアの言葉に私は少し吹き出し

「プッ、そうかもね」

「あー何よー、その“プッ”はぁ」
 タニアは少し怒った顔をし、声を出して笑いだす。

 私も笑った。

 その日、また一人、行方不明者が出た。

②-1
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 それから一週間が過ぎ、行方不明者は五名に上っていた。

 さすがに教会の雰囲気も変わってきている。

 シスター見習いばかりが立て続けに五人も消えればうわさも立つのが普通だ。

 休み時間はその話題でもちきりだ。

 逃げ帰ったという者もいたが、五人とも孤児だったため、行く当てなどないはずだ。

 中には殺人鬼に殺されたというものあった。

 タニアはこういった話題が好きなので、自由時間は私から離れ、熱心に噂を集めている。

 私は、さらにあの“見られている感じ”が強くなったように思っていた。

 というよりは何か、人間でないものの気配というべきだろうか。

タニアの言ったとおり私には神経質なところがある、だが、“何かがいる”と私の本能が告げている。

ふと、私は教室を見回す。

「……タニア?」

 私は小さく声を上げた

 タニアがいない

「ねぇ、タニアを知らない?」

私は立ち上がり、さっきまでタニアが話していた一団に話しかける

「さっきトイレに行くって出て行ったけど」

「ありがと」

 私は短く礼をいい、歩き出す

 嫌な予感がした、どこへ行くにも私と行動を共にしていたタニアが一人でトイレに行くなど普通はない。

 動悸(どうき)が早くなる。

私がトイレに着くと……タニアは手を洗っていた。

「あ、ケイト、どうしたの?」

 手を拭きながら呑気(のんき)に言ってくるタニアに私は肩すかしを食らったような気になり眉間(みけん)に指を当てる。

 心配した自分が妙に腹が立つ。

「……なんでもない」

「あ、もしかして心配した?」

 聞いてくるタニアに私は苛立つ。

「してませんっ」

 言って私は大股でタニアの横を通り過ぎ歩き始める。

「ちょ、ケイト、待ってよ、ごめんってばぁ」

 ついてくるタニアに私は振り向き

「中まで入ってくる気!?」

 私が言うとタニアはシュンとする。

 私はため息を吐き

「いいから、外で待ってて」

 私は言ってトイレの個室に入った。

 そして一つため息をつき、何もせずに出てきたとき、タニアはいなかった。

「待ってて、って言ったのにまったく…」

私は呟いて、教室に戻るが、タニアの姿はない、もう次の授業が始まるころで、全員移動を始めていた。

(部屋にいるのかな……?)

 私はそう思い、自分の荷物を取りに行き、あることに気付く。

 タニアの荷物がそのまま置いてあったのだ。

 私は奇妙に思うがタニアの荷物も持ち、部屋に戻る。

 しかし部屋にもタニアはいなかった、それどころか次の時間に必要なものもそのままある。

(……まさか)

 私の胸に不安がよぎる。

 私は祈るような気持ちで次の教室へ急いだ。

 だが、そこにもタニアの姿はなかった。

 結局、タニアは見つからず、失踪者のひとりとなった。

 その夜、私は独りになった部屋で泣いていた。

夕食は摂っていない、それどころではなかった。

(あの時、意地を張らずに心配したと言って一緒にいればよかった……)

 そんな思いが私の胸を締め付ける。

 そして、この聖地の教会で何かが起こっていると確信する。

「何かが……起こってる」

 私は呟く

 そして、あることに思い当たる。

 あの棺を背負った白尽くめの男だ。
 
 あの男と会ってから失踪者が出始めた、無関係とは思えない。
 
 私はいてもたってもいられず、寝巻きから修道衣に着替え、配布されている外套(がいとう)を引っ張り出して羽織り、教会から抜け出した。

 深夜の聖都は静まり返っていた。
 砂漠の夜は昼の暑さとは打って変わって冷え込む、凍るような夜気に私は身を少し強張(こわば)らせる。

 空には雲も多いようだが満月が懸かっているため視界には事欠かない私は少しの間歩いていて、幾つかのことに気付く。

 考えてみればこの広い聖都のどこへ行けばあの男に会えるのか全く分からない、その上自分はここに来た最初の日しか聖都を歩いていない。

大聖堂は大きな建物なので目立つが、離れすぎると帰ってこられるかは疑問だ。

 私は少しの間迷うが、意を決して都へと繰り出す。

 誰とも全く出会うこともないし、どの店も閉まっている。

 これほど大きな街なら酒場くらいは開いていないかと探すが、どこも開いてはいないようだった。

 私はちょっとした路地に入り、少し歩いて立ち止まる

「……やっぱり、こんな状況で探しても見つからないか」

 私はため息をついて壁に背をもたれる。
 
 そもそも人探しなどしたことがないのだから見つからないのは当然だろう。

 だいぶ歩いたので疲労はかなり溜まっていた。

 そして、私が帰ろうとしたとき

 ズズ……ズズズ

 そんな音が聞こえてくる、何か重い物を引きずるような音、それと共に私の背中を悪寒(おかん)が走る。

 私は息を殺して音が聞こえてくる大通りを窺(うかが)う
 
 今は月が雲に隠れているため、よくは見えないが、そこには、何か巨大な、そして決して人間ではないシルエットが蠢(うごめ)いていた。

 それは、言うなれば巨大な芋虫だ。

 芋虫はふと動きを止め、頭らしき部位を持ち上げ周囲を窺っているようだったが、突然に私のほうに向き、それはこちらに這いよってくる。

 私は恐怖に駆られ路地の奥へと駆け出す。

(あんなものがこの世にいるわけがない)

 私はそう思い、走りながら振り向く

 だがそこには意外にも早いスピードで這い寄って来る異形の姿があった。

 私は走り続けるが、先に目を向けたとき、路地が行き止まりになっていることに気付く。

 私は壁を背に立ち止まる他なかった。

 私を追い詰めた芋虫も止まる。

 そのとき、月の光が雲間から差し込み、辺りが照らし出される。

 異形の姿も例外ではない、照らし出されたその姿は芋虫というよりは蛆(うじ)だった。

 白くぬめったその姿に、私は嫌悪を感じずにはいられない。

 そして、蛆の頭部が三つにわれ、牙がびっしりと並んだ裂け目が現れる。

 まるで悪夢の中のような光景に私は声を出すこともできず、壁をずり落ちるようにしてへたり込む。

 蛆が牙を剥いて私に飛び掛る。

 私はきつく目を瞑り体を硬くする。
 
 その時だった。

 ドガァッ
 
 何かが砕ける音が私の頭上で響く。

 そして、幾つもの硬い破片が私に降りかかる。

 そのまま数秒が過ぎるが、大した痛みも、死も私には訪れなかった。

 私はゆっくりと瞼(まぶた)を上げる。

 私の目に入ってきたのは私の頭上の壁から生えてきた、言うなれば巨大な『腕』だった。

 人間の部位で言えば腕だろうが、決してそれは人間のものではない。

 その腕は暴れる蛆の頭を掴み、軽々と宙に止(とど)めている。

 そして、腕が蛆の頭部を握り潰す。

 蛆から噴出した液体が爆ぜて私に降り注ぎ、私の意識は、そこで途絶えた。



次へ ●第一節③ 聖天使(せいてんし) 

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アンジェリカ 第一節③ 聖天使(せいてんし)
2007-08-11 Sat 14:34
見知らない廃屋らしき場所で私は目を覚ました。

どこかは全く分からなかったが、時刻は夕暮れに差し掛かろうというところだ。

辺りからは何も聞こえてこないことから、聖都の郊外に位置している場所なのだろうと 私は思った。

自分がどれくらい寝ていたのか、まったく見当が付かない。

私はあの化け物のことを思い出し、自分の体を見る。

着ていた修道衣と外套はそのまま、土の汚れはあっても液体がかかってできたと思われる汚れはなかった。

私は一つ息を吐く。

「夢……だったのね……」

恐らく途中で歩き疲れて寝てしまったのだろう、そういえば最近疲れが溜まっていたように思う。

私は顔にかかった髪を掻き揚げ

「でも、ここはどこ……?」

私は辺りを見回して呟く。

まず、焚き火が目に入ってくる、やはり、倒れた後に私を誰かがここに運んできたらしかった。

そして、さらに視界を巡らす。

次に視界に入ったのは薄汚いズタ袋、中に何が入っているのか知らないが、パンパンに膨れている

そして、最後に目に入ってきたのは、鎖で雁字搦めにされた黒塗りの箱……

 棺だ。

「よう、やっとお目覚めか」

 突然にかけられた声にそちらを向くと、こちらに向かってくる人影が一つ。

あの白尽くめの男だ、棺は持っていないが、その代わりに生きた鶏を一羽手に提げている。

 私は思わず後退る。

「……この前会ったときといい、やはり覚えてねぇようだな、まぁいい、それよりそう構えることもねぇだろ、せっかく助けてやったんだからな」

 男は言って左半身を覆うマントの下から左腕を出す。

 それは、人間の腕からはかけ離れたものだった。

 そう、昨夜あの化け物を握りつぶした異形の腕だ。

 私はその時あの出来事が夢でなかったことを確信する。

 次の瞬間、男は何の躊躇(ちゅうちょ)もなく鶏の首を撥(は)ねた。

「!」

 私は思わず目を背ける。

 私が恐る恐る男に目を向けると、凄惨な光景が飛び込んでくる。

 私がまた目を背ける中、男は血抜きを続け、羽毛を剥(は)いで鶏を捌(さば)き始めたようだった。

 私は耳を塞(ふさ)ぎ男が鶏を切り裂く音を遮(さえぎ)る。

 やがて男は鶏の肉を串に刺して焼き始める。

 その様子を私は遠巻きにして見ていた。

 暫(しばら)く気まずい静寂が流れる。

 やがて、肉の焼ける臭いが辺りに漂い始める。

「おい、こっちに来たらどうだ、そろそろ焼けるぞ」

 男が声をかけてくる。

「……いらない」

 私は男の誘いを断る。

「やれやれ、せっかくテメェ等流のやり方で料理してやったんだがな」

 男は言って串のうちの一本を手に取り、かぶりつく。

「野蛮だわ」

 私の言葉に男は肉を咀嚼(そしゃく)して飲み込み、嘲(あざけ)るような笑みを浮かべる。

「ほう、まぁそう言うんならそうなんだろうな、あんたが今までどれだけお上品なものを食ってきたのかは知らねぇが、俺にとってはこれが生きるということだ、鶏だろうが麦だろうが何かを殺して糧にする、そうしてしか俺達は生きられない、違うか?」

 男の皮肉と問いかけに、私は反論しようとするが

 グウゥゥ

 私のお腹から音が漏(も)れる。

 私はみるみる顔が赤くなるのを感じる。

 そういえば、私はどれくらいの時間気絶していたのだろうか、少なくとも今は夕暮れ時だ、夕食もとっていないことを考えると相当な時間何も口にしていないことになる。

 男は懐(ふところ)に手を入れ一切れの乾パンを取り出し

「肉が気にくわないなら、こいつでも食うんだな」

 言って私に乾パンを放る。

 私は慌ててそれを受け取り

「食べ物を放るなんて……」

 私は言葉と共に非難の眼差しを男に向ける。

「せっかく用意した食い物を食わないやつよりはマシだ」

 男は言ってまた肉にかぶりつく。

 私は立ち上がり男の傍(かたわ)らに大股で近づき、乱暴に座る。

 そして、肉の刺さった串を手に取り、私はそれにかぶりついた。

 何の味付けもしていない粗野な料理……これが、私が生まれて初めて口にした肉だった。

「やればできるじゃねぇか」

 男が笑う。

 私は不機嫌に男から顔を背け、肉をまた口にした。

 食事を済ませ、私は少し落ち着いてくる。

 辺りは都の中とは思えないほど静まり返っている。

 聞こえるのは火が爆ぜるパチパチという音だけだ。

「……あなたは……何者なの?」

 私は男に問いかける。

 あの異形の腕といい、白尽くめの出で立ちといい、何より私を知っているような口ぶり、只者ではないのは確かだ。

 そういえばさっきまで気付かなかったが男は公用語ではなく私のいた地方の言葉で話している、しかも流暢(りゅうちょう)にだ。

 男は問いかけに答えず暫く火を見ていた。

 だが、ふと私に目を向け

「さぁな、あんたは俺が何に見える?」

 男の意外な言葉に私は返答に窮(きゅう)する。

 男は苦笑を浮かべ、マントから左腕を出す。

「大体の奴は、この腕を見て俺のことを化け物だと言った…変わり者は人間だと言ったがな」

 男はちらりと棺に目を向け、腕を仕舞う。

「俺が何者なのかってのは、それを判断する奴が決めるもんだ、あんたが俺を化け物と蔑もうが、俺は別に構やしねぇ、俺にとって俺は俺だ、それ以外の何者でもない」

 男は言って視線を火に戻す

 少しの間、沈黙が流れる。

「あれは……あれはなんなの、私を襲ったあれは…?」

 私は自分に襲いかかり、この男に握りつぶされたあの異形の生物について男に問う。

 思い出すだけで背筋が寒くなる。

「……使い魔……という表現が一番近いだろうな」

 男の言葉の意味が、私には理解できなかった。

 男は、どこか遠くを見るような目をして虚空を見る。

「昔、高度な技術を誇る文明があった…船が空を行き交い、高い建物が立ち並んでいた……人々は世界を我が物と為し、文明は栄えた」

 男は意味不明の言葉を紡ぎ続ける、まるで物語を語るように

「あるとき、賢者と呼ばれる者たちが、ある研究を始める……魔法という力の研究……」

 私はそこで、男が何を語っているのか気付く。

「彼らは見事、それを完成させた、だがそれと共に文明は滅びることになる……」

「“聖天使降臨”……の話よね、それ」

 言葉を継いだ私に男は目を向け

「そうだ」
 男は短く私の言葉を肯定する。

「私、一応見習いだけどシスターよ、それくらいは知ってる」

「だろうな、なら、この物語の顛末(てんまつ)も知ってるだろう?」

 男の問いに私は自分が馬鹿にされているのではないかと思うが、何度も読んだその一節の顛末を思い出す。

「……降り立った天使は文明を滅ぼし、その四枚の翼から一枚ずつ羽毛を抜き、その内三枚から十二使徒が生まれ、残る一枚から無数の悪魔が生まれ、世に解き放たれた…」

 この一節から『四翼聖教』は『フォアフェザー』とも呼ばれている。
私は少し考え

「……まさか、あれがその悪魔だと……」
私は真剣な眼差しを男に向ける。

 そう考えるくらいしか納得できる答えはなかった。

 男は皮肉を含んだ笑みを浮かべ

「……よくもまぁ、そんな迷信を疑いもせず信じる気になるもんだ、さすがは聖職者だな」

 男の言葉に私の感情が沸騰(ふっとう)する。

 私は男に掴みかかっていた。

「聖天使の教えを馬鹿にするのは赦(ゆる)さないっ」

 私は叫んでいた。

 私自身の全てを否定されたように思った。

 今まで、その教えの下に私は生きてきたのだ。

 男は軽く私の手を払い退け

「なかなか威勢がいいじゃねぇか、だがな、お前がその聖天使様の素顔を知ったら、どう思うだろうな?」

 男は笑みを崩さずに言う

 私は払われた手を押さえ

「……どういうこと?」

「これから分かるだろうよ、十年前の記憶も含めてな」

 男の答えに私は眉根を寄せる

「……!、何で私の記憶のことを知ってるの?」

 私は口調を鋭くして男に問う。

 しかし男はそれ以上語ろうとはせず、また火に目を向ける。

「…………」

 私は無言で立ち上がる
「……どこへ行く気だ?」

 私は自分の方を見もせずに言ってくる男を睨みつけ

「帰るんです、きっと今頃皆が心配してる…」

 私は言って踵(きびす)を返し歩き始める。

「やめておいたほうがいいと思うがな…この都は今や魔都だ、夜にもなれば化け物供が我が物顔で大通りをねり歩いてる…昨日の街の様子を見ただろう、誰もこの時間うろついてる奴なんざいやしねえ…」

 確かに昨夜の街の様子は尋常(じんじょう)なものではなかった。

「ちなみにいうとそっちは逆方向だ」

 男の言葉に私は赤面して再度踵を返し、早足で歩き始めた。



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くろのさんサンクス1
2007-08-11 Sat 21:43
マシュウ


少し前に僕の作品見てくれたお方「くろの」さんから画像使用の許可が下りたんで、画像祭りですよ!
この物語の主人公を「くろの」さんが書いてくれましたよー。
やっぱスゲエや。
カッチョイイっす。
最高ですよ、「くろの」さん、ありがとうございます。
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