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アンジェリカ第二節20 義務(ぎむ)
2007-11-24 Sat 22:07
「そうか……なら仕方がない……少々手荒な真似をしても……そこをどかせるまで」

 父は言って右手を振り上げた。

 僕は思わず目を閉じる。

「待てよ、まだ俺の相手が終わってねえだろうが……」

 それは、確かにあの男の声だった。

 ゆっくりと瞼を上げ声のしたほうを見ると、いつの間にか、床に開いた穴の向こう側に男は立っていた。

 淡く幻想的な月光が織り成すヴェールの向こうで、血の斑模様で彩られたボロボロの白い服とマントが吹き込む風になびいている。

「ほう、あれをしのぐとは、少々甘く見ていたよ」

 父は男に向き直る。

「同じ手で二度も三度もやられてやるほど俺は甘くねぇんでな」

 男は言って宙を舞い、こちらの床に着地したと同時に凄まじい加速を見せる。

 一気に男は父との間合いを詰め、白い炎で続けざまに父に斬りつける。

 父は前のように片手でその重い斬撃を簡単に受けてみせる。

 そして、男は父の一瞬の隙を見つけ巨大な左手で父の胴を掴む。

 男の左腕全体が盛り上がり、凄まじい力が手に込められる。

 しかし、父はまったく苦しげな表情を見せない、それどころか余裕すらあるように見えた。

「この程度かね、君の力は?」

 父が言った瞬間

 男の左手の中から無数の剣が突き出る。

「がっ!」

 男は短く声をあげ父を手放す。

「もう、諦めてはどうかな、君に勝ち目は無いと思うがね」

 父は言ってあの笑みを浮かべる。

 男は左手を押さえうずくまっているが、もう再生は始まっているようでジュウウという不快な音と白い湯気のようなものが立ち上っている。

「……ククッ……クククククク…………」

 ゆらりと男が立ち上がり、含み笑いを漏らし始める

 さすがの父も怪訝そうに顔をゆがめる。

「何が可笑しいのかね?」

「ククククク……吠えてくれるじゃねぇかよ、感情に飲まれ、化け物に成り下がった負け犬風情がよ……いいだろう、見せてやろうじゃねえか……彼女の……アンジェリカの」

 男は顔を上げる

 その表情は今まで僕が見てきたどんな人間の表情よりも凶暴な笑みだった。

「……真の力ってやつをよぉ!」

 男は叫び再び白い炎を構えた。


 だが、何か様子が違う。

 揺らめいているのだ、その炎を模した刀身が。

 やがてそれは本物の白い炎と化した。

 音も立てず淡い闇の中で燃え盛るそれは美しいとさえいえた。

 白い炎を持つ男の右手が翻ると、男の意思に呼応したかのように白い炎が伸び、白い火の粉を撒き散らしながら白い蛇を思わせる動きで父に襲い掛かる。

 父は炎に向かって右手を翳しそれを受け止めようとした。

「がああああああ!!!」

 父の悲鳴が響き渡る。

 白い炎を受けた父の手は食いちぎられたように炎で灼き尽くされていた。

 その間にも白い炎が手首を伝い父の体を侵食していく。

「がああ!」

 父は空中に出した剣で自らの腕を切り落とす。

 それと同時、黒い液体が傷口から吹き出した。

 男の左手が切れたときに流れていたものと同じように見える。

「父さん!」

 僕は叫んで父に駆け寄ろうとする

「くるな!」

 男の言葉に僕は立ち止まる。

「見ていただろう、そいつはもうお前の思っている父親じゃあない・・・それどころか人間ですらねぇんだよ・・・これはもうお前らただの人間の出てくる幕じゃあねえんだ、お坊ちゃんは大人しくそこでへたってろ」

「でも・・・」

 言いかけた僕の目が男の赤い光の灯った目と合う

 僕は、そこから先が言えなくなった。

 いや、体全体の自由が利かない、息が詰まり、体中から汗が噴出する。

 男の目線が父に戻されると、僕の体が呪縛から解き放たれる。
僕はその場でへたり込んだ。

 そのとき、やっと僕は悟った、これは人間の領域で立ち入ることのできない闘いなのだと。

 男と目が合ったとき感じた、まるで猛獣……いや、それ以上の何かと対峙したような感覚。

本能が告げている、彼らが僕たち人間の天敵であることを・・・

「はあ・・・はあ」

 僕は荒く息をついた。

 男と父はその間に戦いの続きをを始めていた。

「う・・・ウェイン君、頼む、血を止めてくれ・・・このままじゃあ失血で死んでしまう」

 僕に話しかけてきたのはエリックだった。

 その顔は痛みにゆがみ顔色は蒼白になっている。

 僕は、正直迷った、この男が、姉を死に追いやった元凶なのだ、許す気にはならない。

 僕は暫く躊躇した後、自分の服を破り傷口にあてがい、きつく結ぶ。

 エリックが悲鳴に近い声を上げるがそれを無視してさらに破った布で腕を縛り上げた。

「・・・これで少しはましになるはずです」

「い、医者、医者に連れて行ってくれ、この状態じゃあ僕一人でとても歩いていけない」

 エリックがまとわりつくように僕に寄り添い懇願してくるが、僕は首を横に振った。

「僕は・・・この闘いを見届ける義務がある・・・あなたも、これを見なくてはいけない」

「そ.そんな、その間私はこのままなのか!?」

 エリックが涙目で言う

「姉を殺すよう依頼を出しておいて、あなたはよく僕に助けを乞えるな、正直僕はあなたを殺したいし、今の痛みも、あなたが父に殺されても、それはあなたのやったことの報いだ」

 僕はエリックを突き放した。

「そんな……君は私を見放すのか!」

「姉を捨てたあなたに言われる筋合いはない、いいから見るんだ、この状況を作ったものとして、あなたはこれを見なくてはならない!」

 僕は言って闘いの場に目を向けた。

 父は、男の繰り出す巨大な炎の鞭をかわし、宙に出現させた無数の剣を男へと投擲する。

 しかしそれも白い炎に飲まれ消えうせる。

「どうした、さっきからてんで手ごたえがなくなったじゃねぇか、逃げ回るだけじゃ俺は殺せねぇぞ」

 男は攻撃の手を休め、挑発の言葉を飛ばす。

「確かに、このままでは私に勝ち目はないようだね……」

 父は言って、背からあの刃で形作られた翼を広げる。

「私も本気にならなければならないようだ……ググ……グアアア!」

 父が苦鳴を漏らし、その体から幾つもの剣が突き出した。



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この記事のコメント
遂に戦いもクライマックスか・・?!

それにしても、白い炎・・なんて幻想的。

そして、エリックのヘタレっぷりに怒りを通り越して呆れてしまいますね。
2007-11-25 Sun 00:44 | URL | 鳥吉 #026aT6s6[ 内容変更] | top↑
鳥吉 さん
マシュウ君のデザインはに夜に映えるよう考えました。
アンジェリカはその最たる例でしょうか。
激しくも美しい戦いの表現を目指しております(遠い;

エリックは私自身で書いたことを後悔したほどに最低なキャラです(をぃ
2007-11-25 Sun 08:00 | URL | 銀蛇 #-[ 内容変更] | top↑
 おはようございます。
 まず、かっけえー、の一言(笑)
 この男の不敵なセリフ、いつもしびれます。アウトローを描くの、ほんとうにお上手ですね。
 でも、人間の天敵になるのか。
 この戦いの結果。どちらが勝ってもウェイン君は辛いだろうな・・・・。
 エリックはどうでもよいですが。 
 また寄らせて頂きます。期待してます。
 
2007-11-25 Sun 08:11 | URL | 紗羅の木 #EBUSheBA[ 内容変更] | top↑
紗羅の木さん
おはようございます。

「かっけえー」といっていただいて非常にうれしいですww
しびれるとまで、最高のお褒めの言葉に感謝!

マシュウは狭間の住人とも言える孤高の存在です。
人間と敵対してもなんらおかしくありませんし、力の源はその体に流れる十二使徒の一人、レグルの血と遺伝子によるものです。
よって彼の力は人の魂を糧にするマリアベルやケインのような”眷属”達と同じ根幹を持っているといえます。

ウェイン君はこの悲劇を乗り越えられるのか。
そしてエリックは確かにどうでもいい(をーぃ

またそちらで作品読ませていただきますねww



2007-11-25 Sun 08:48 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
・・・・・・・・・・・・眠



これは、ダメだ 最近いろいろとあって、夜になかなか寝れなかったが・・・・・


この眠たさは異常
2007-11-25 Sun 09:42 | URL | www121 #-[ 内容変更] | top↑
www121 さん
そういうのは一言帳使って;
せっかく作ったんだからさ。
うん、寝るべきだと思うよ。
ずっとおきてて死んだ人いるって話だから。
2007-11-25 Sun 09:59 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
お、おとーさんはどこまで行くんですか
そしてエリックにイライラ・・・
やっぱ、マシュウさんかっこいい♪
2007-11-25 Sun 13:51 | URL | ウィスペル #-[ 内容変更] | top↑
ウィスペルさん
おとーさんは行くトコまでいってしまいます;

エリックはもうなんていうか……人間として終わってます。

マシュウさんは半分人間ではないですが人間のエリックとは比べ物になりませんなww
生き方の格が違う。
2007-11-25 Sun 18:56 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
ついに決着がつくのかぁ!
ごめん…どうしてもお父さんを応援したくなってしまいます;
エリックはどっちみち、いい未来はないですな…
2007-11-25 Sun 23:36 | URL | 蒼月樹 作也 #mQop/nM.[ 内容変更] | top↑
なぜか お父さん>マシュウ イメージ (おい

いけー! お父さん! 勝てー!

マシュウ ファイト! 勝てー!
2007-11-26 Mon 00:16 | URL | 紅影死神 #-[ 内容変更] | top↑
蒼月樹 作也さん
その気持ち分はかります!
お父さんもかっこええですもんね(をぃ

エリックは……


紅影死神さん
どっちを応援するか悩むトコですよね。
ウェイン君としても複雑な心境かと。
2007-11-26 Mon 19:54 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
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