アンジェリカ第三節4 現実(げんじつ
2008-01-25 Fri 21:29
(妹が苦しんでいるのに・・・ぼくは何も出来ない)

 誰も助けてくれない世間にも憤りはあったが、何よりも自分の無力さが悔しかった。

 ぼくが帰ると、あまりにもそこは静かだった。

(エミリは・・・寝たのかな・・・)

 ぼくはそんなことを考えながら廃屋に足を踏み入れた。

 天井の隙間から月光が差し込み、妹を照らしていた。

 妹はこちらを向いていた。

 妹の目から涙の跡が月の明かりを受けて光っている。

 妹の手は何かを掴もうとしたのかこちらに伸びていた。

 ぼくはゆっくりと妹に近付いた。

 そして、妹の手に触る

 妹の手は、冷たかった。

 ぼくは震えた、寒いわけではない、だが震えが止まらない。

「おい、エミリ、冗談・・・だろ?」

 ぼくは言って妹の体を揺するが、反応はない、額に手を当てると、あれだけの高熱があったはずの体はいまや冷たくなっていた。

「うそだ・・・うそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだ・・・」

 ぼくは後退さって同じ言葉を連呼した

 そうせずにはいられなかった。

 止まらない震えにぼくは自分自身を抱きかかえる、心の中がどんどん底冷えしていく。

 そして心の中ではまだ「うそだ」と連呼し続けている。

「うそだあああああああぁぁぁぁぁぁ――――――――――!!」

 ぼくは叫んだ。


 翌日、ぼくは何もせずただ呆然としていた。

 壁によりかかって座り、横たわっている妹の姿をただ見ていた。

 何もしたくない、何も食べたくない・・・生きる意味が分からない

 ぼくの体が少しずれたが、それを直す気にすらなれない

 いっそのこと死んでしまいたかった。

 しかし、その気力すらない

 ただ妹の死体をぼくは見続けるだけ・・・

 どれくらい時間が経っただろうか、長いようでもあり短いようでもある。

 だがそれを確認する術もなく、また確認する意味もないように思えた。

 突然、外の様子が慌ただしくなる。

 ぼくは、仕方なく立ち上がり、何が起こっているのかと外を覗き見る。

 外では、憲兵がスラムの疫病の発症した住人を捕まえて回っていた。

 抵抗する人間も容赦なく殴られ、拘束されていく。

 ぼくはやばいと思った、ここに奴らが来れば妹は連れて行かれてしまう

 妹の体を焼かれるのは嫌だった。

 ザッザッザ

 だが、無情にも三人の憲兵がぼくのいる廃屋に足を踏み入れてきた。

 ぼくは憲兵に立ち塞がる。

「おっ、何だこのガキ」

 憲兵の一人が言って僕を睨む

「発症は・・・してないようだな、お前に用はない、奥の奴は・・・」

 別の、特に横柄な憲兵がぼくを見た後、妹に目を向ける。

「どうやら発症しているようだな・・・どけ、邪魔だ」

 憲兵はぼくを見下ろし腰の警棒を引き抜く。

 ぼくは両手を広げ憲兵たちを睨み付けた。

「お兄さんたちの言うこと聞かないとひどい目にあわせちゃうぞ、さ、どきな」

 おどけた口調で最後の一人が言う

「どくもんか、ぼくは妹を守るんだ」

 ぼくは声を張り上げた。

「いい心がけだ、坊主・・・だがな」

 横柄な憲兵がそこまで言ったのと同時、ぼくの腹に憲兵の靴の爪先が突き刺さる。

 ぼくは吹き飛ばされて壁に叩きつけられ、腹を押さえてうずくまった。

 嘔吐したがぼくの空の胃からは透明な液体が出るだけだった。

「力のないカスがいくら咆えたところで現実は変えられないんだよ・・・全く、面倒かけやがって・・・」

憲兵たちは妹に近寄り妹の体を靴で小突く。

「何だ・・・死んでいるのか・・・大層に守るだの何だのとほざいていたが、守るべき対象がこれでは戯言だな・・・まあいい、こいつを連れていけ、焼却処分する」

 一人の命令に二人の憲兵は従い、妹の襟首を掴み持ち上げる。

「やめ・・・ろ」

 ぼくは何とか立ち上がり声を絞り出した。

「ぼうや、このお兄さんを怒らせないほうがいいぞ、何せ融通が利かない、任務のためなら女だろうと子供だろうと、年寄りだろうと容赦しないからねぇ」

 妹を持っている憲兵が言ってせせら笑う。

「妹を・・・返せ・・・」

 ぼくは歯を食いしばって上体を起こし憲兵たちに襲い掛かった。

 憲兵の持っている警棒が振り上げられ、それがぼくめがけて振り下ろされた。



少し早いですが、明日は多分更新できないので早めに;;



↑一日一回ポチしてください

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
↑さらにこちらも一日一回……;


ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「アンジェリカ」に投票
↑ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
↑一ヶ月に一回こちらも。(あつかましい)


次へ●第三節5 麺麭(パン) new

前へ●第三節3 無力(むりょく)


トップページへ

別窓 | ホーム | コメント:18 | トラックバック:0 | top↑
<< |   銀蛇の巣 | 神楽>>
この記事のコメント
悲しみを乗り越えて
ああ…死んじゃった…
半分予想していましたが(あとの半分はマシュウ登場の予想)言葉悪いですがあっけない死に方…まあ、これが現実ですかね。
ここまで全部見ていますが、ほかの一般人(特に三章)がひどい奴ら!!と思うのは私だけでしょうか?
そしてそろそろマシュウ登場しようよ…
2008-01-26 Sat 00:29 | URL | .TETSUYA #-[ 内容変更] | top↑
うわあああああああ・・・・

こんなにも早い段階で亡くなってしまうとは・・・。

てっきり、マシュウさんが不法侵入していて驚く青年に向かって「よっ。元気?」なんていう展開を予想していたのに!
2008-01-26 Sat 08:01 | URL | 鳥吉 #026aT6s6[ 内容変更] | top↑
 こんにちは。
 アレン君、大変気が立ってますが、身近な人の死に目に会うとなぜか人間どこかボーとしてしまったり、こんなふうに気が立ってしまったりしますよね。
 泣くことも忘れてしまう、というのはあながち嘘ではないです。灰になったのを実感してやっと泣けてきたりしますよね。
 この先、過酷な試練がアレン君を待受けている?
 銃が登場するというオリジナルの投稿作品、ぜひ拝見したいですね。できれば、誌上で☆ 頑張って下さい。
2008-01-26 Sat 17:37 | URL | 紗羅の木 #EBUSheBA[ 内容変更] | top↑
マシュウさんーっっ
生き物って、死ぬ時は、なんというか、あっさりしんじゃいますよね・・・
遠い昔の悲しみが・・・
2008-01-26 Sat 22:39 | URL | ウィスペル #-[ 内容変更] | top↑
そろそろマシュウ様のおでましかな?w
しかしなんと早い死…
もう少し生きていてほしかったですよ〜
2008-01-26 Sat 23:19 | URL | 蒼月樹 作也 #QAt7aVcw[ 内容変更] | top↑
さばらく忙しくて読めなかったよぅorz

アレン&エミリ、悲惨すぐる(ToT)
アレンの信じられないという気持ちが…orz
2008-01-27 Sun 00:42 | URL | 紅壱 #-[ 内容変更] | top↑
ええいっ!
でてこーいっ!マシューウっ! (TдT)
でてきてなんとかしなさーいっ!!
うわあああーんっ!!

…つい、取り乱しました。
我らがヒーロー、いまいずこ…(泣)。
2008-01-27 Sun 22:34 | URL | 石和 仙衣 #pcEsqDro[ 内容変更] | top↑
 やっぱり予想どおりにはならなかったですね^^;

「まさかレイプ?!」
 とか予想していたのですが…それが外れて良かったのか、微妙ですw;
 アレンの今後の運命から目が離せません。

 無理しすぎず、マイペースで更新がんばってください。
 もちろん投稿作品のほうも応援しています^^
2008-01-28 Mon 04:09 | URL | マミヤ #t5k9YYEY[ 内容変更] | top↑
TETSUYAさんへ
悲しいかな、現実とはえてしてこういったものですよね。
確かにこの物語の端役でインパクトのある人はひどいやつらですね;;;
でもそこから人に「人間これでいいのか?」と問いかけられれば……と思っております。
反面教師というやつでしょうか。
2008-01-28 Mon 09:06 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
鳥吉さんへ
マシュウさんはまだ出てきてくれませんね;
早すぎるエミリの死……でも世界中で飢えや伝染病で死んでいく子供たちはかなり多いのも事実です。

あえてここは心を鬼にして……
2008-01-28 Mon 09:11 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
紗羅の木さんへ
あまりに唐突に大切な人を喪う……
私も経験が……しかも幼い時に;

現実はえてして弱いものに非情なのが世の常……
どうにかならないものでしょうか;

投稿作品がんばります!


2008-01-28 Mon 09:17 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
ウィスペルさんへ
生は儚いですよね。
「朝には紅顔ありて、夕べには白骨となれる身なり」
という言葉があります。
人生なにがあるかわかりません。
自らの人生を悔いのないように過ごし、周りの人達を大切にしていきたいものです。
2008-01-28 Mon 09:24 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
蒼月樹 作也さんへ
さて、どうでしょうか、次回をお楽しみに。

もう少し〜
>それはアレン君も同じだったはず。
それでも奪っていくのが現実ですね……
2008-01-28 Mon 09:32 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
紅壱さんへ
アレンの信じられないという気持ちが〜
>ああ、その辺わかってくれるとうれしいです。

確かに悲惨ですね……
2008-01-28 Mon 10:07 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
石和 仙衣 さんへ
これからどうなってしまうのか

マシュウさん何してるんでしょうか。
それは・・・次回のお楽しみ
2008-01-28 Mon 10:14 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
マミヤさんへ
さ、さすがにそれは;;
続きをお楽しみにww

優しいお言葉ありがとうございます。
ぼちおぼちいきます;
2008-01-28 Mon 11:27 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
おひさです


ブログ再開しました
2008-01-28 Mon 22:01 | URL | www121 #-[ 内容変更] | top↑
おひさです

とりあえず行きますw
2008-01-29 Tue 00:57 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
|   銀蛇の巣 |

ブログ内検索

RSSフィード

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ