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2008-03-01 Sat 20:03
その日、ぼくは食料を手に入れるのにたいそう苦労した。
スラムの人間の大半が疫病で死んでいたため、今までこの界隈は空いていたのだが、最近になって他の区画からここに流れてくる人間が出てきた。 ぼくもそういった人間の一人なわけだが、ぼくが来たころに比べると疫病の死者の数も落ち着きを見せ、この一帯に新しい秩序が生まれようとしていた。 ぼくの周りでも縄張り云々のいさかいが起こり始めているし、食料を得るのも早い者勝ちといった感じになり難しくなってきている。 ぼくが何とか妹の分の食料を得られたのは日が暮れかけた頃だった。 (エミリ・・・お腹空かせてるだろうな・・・) ぼくは一つため息を付き、帰路についた。 住処としている廃屋の近くまで帰ってきたとき、ぼくは様子がいつもと違うことに気付く。 あたりは静まり返っている。 だが人気がないわけではなく、どこからか幾つもの刺すような視線を感じる。 ぼくは居心地の悪い空気の中、歩を進めていく。 エミリが帰ってきてからぼくの周りにいた人たちがぼくを避けているのはなんとなく分かっていた、だが今日のこの状況は異常だ。 「お帰りなさい、お兄ちゃん、今日は遅かったね」 扉のない入り口をくぐるといつものようにエミリが迎えてくれる。 何も起こったようには見えない。 いつもどおりの光景だ。 だが、外の状況は明らかにおかしかった。 「ああ・・・少し食べ物を見つけるのに苦労してね・・・ところでエミリ、今日・・・外で何かあったのかい?」 ぼくはエミリに聞いてみる 「特に変わったことは無かったと思うけど・・・?」 エミリは言って心配そうにぼくを見る。 「それならいいんだ・・・ちょっと表の様子が変だったからね、何もなかったんなら気にするほどのこともないだろ、心配することないよ・・・」 ぼくは言ってエミリに食べ物を差し出す 「ほら、今日の分」 「うん」 ぼくがパンを一つ差し出すとエミリはうれしそうにそれを受け取り、お祈りをして食べ始める。 ぼくはそれをただ見ていた。 「・・・おにいちゃんは食べないの?」 エミリがぼくの様子に気がついて聞いてくる。 「ああ、ぼくはいいよ、エミリが全部お食べ」 ぼくは言って微笑む。 エミリはもう半分以上食べていたパンをぼくに差し出す 「半分こがよかったんだけど、もう食べちゃったから・・・これ」 「ぼくはいいよ・・・」 「お兄ちゃんも食べなきゃダメ」 エミリは断固とした口調で言った。 (ああ・・・やっぱりエミリだ・・・今目の前にいるのは間違いなくぼくの妹だ・・・) 「・・・分かった、もらうよ・・・」 ぼくがパンを受け取ろうと手を伸ばす そのときだった、突然に幾つもの石が飛んできてぼくとエミリを打ち据える。 パンが地面に落ち、エミリは頭に石を受けて倒れる。 ぼくもいくつかの石が体に当たりうずくまった。 何が起こったのかわからなかった、だが何とか冷静さを保ち石の飛んで来た方に目を向けると、この一帯の住人達がほぼ全員殺気立った目をしてこちらを見ている。 何が起こっているのかはやはり全くわからなかった、ただ言えることはこのままだとエミリもぼくも危ないということだけだ。 「・・・化け物め・・・」 暴徒と化した住人の一人が低い声で言う 「なんだ・・・なんなんだよ・・・なんでこんなこと・・・」 「うるさいっ!」 ぼくの問いかけを違う一人が遮る。 「お前ら化け物と聞く口なんざねぇ!」 その言葉と共にまた投石が始まる。 ぼくはどうにか立ち上がりエミリを抱えて隠しておいた裏口から脱出する。 「逃げたぞ、追えっ!」 後方から声が聞こえる。 裏手の細い通路を抜け何とか通りに出る。 いったん立ち止まり振り向くと、集団で狭い通路を通ろうとしているため渋滞のような状況が生まれている。 次にエミリの様子を確認するが、ピクリとも動かない。 後ろから迫る足音がぼくを急かす。 「くそっ」 ぼくは吐き捨て全力で走り始める。 (重い・・・) 人一人を抱えて走っていることもあったが、何よりもぼくは命の重みを感じていた。 今抱えている少女はなんとしても守らなければならない自分の妹なのだ。 「おいアレン、こっちだっ、ついて来い!」 いくらか走ったところで突然声が上がる、そちらを見ると、路地から身を乗り出しているジャンの姿が目に飛び込んできた。 ぼくはその指示に従い、路地に入る。 ジャンはもう走り出していた。 この路地は入り組んでいて不慣れなものが入れば必ず迷う界隈だ。 ぼくは必死でジャンの背を追った。 そして、ジャンは廃屋の一つに入る。 ぼくもそこに飛び込んだ。 「はあはあはあ・・・・・・」 ぼくは壁を背にずり落ちるようにして座り、肩を上下させて息をした 少しして、落ち着いてくる。 追っ手はどうにか巻いたらしかった。 「ここまで来れば・・・大丈夫だろ・・・」 ジャンが息を整えながら言う。 大分ジャンは回復してきたらしいが、ぼくはまだ喋れそうにもない。 「ここは俺の隠れ家でな、そう知ってる奴はいない」 「そう、なのか・・・」 ぼくは何とか答えた。 妹を抱えてよくここまで走ってこられたものだ。 ぼくは妹が石をぶつけられたのを思い出して慌ててエミリを見る エミリは相変わらずピクリとも動かない。 「エミリ、エミリ!」 ぼくがエミリに呼びかけていると、ジャンがぼくを押しのけ、エミリの口元に耳を近づける。 「大丈夫だ・・・息はしてる・・・気を失ってるだけだ・・・」 ジャンの言葉にぼくは安堵のため息を漏らす。 ジャンはこういったことの知識を持っていた、どこで手に入れた知識かは知らないが・・・ 「・・・やっぱりこういうことになってたな・・・」 ジャンはため息混じりに言葉を吐き出した。 ![]() ↑一日一回ポチしてください ↑さらにこちらも一日一回……; ![]() ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「アンジェリカ」に投票 ↑ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回) ↑一ヶ月に一回こちらも。(あつかましい) 次へ●第三節10 覚悟(かくご) 前へ●第三節8 疑惑(ぎわく) トップページへ |
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ジャンの予感が的中したようですね…
一体何がきっかけで突然の暴徒になったのか…それは次回のお楽しみですね… しかしジャン、すごくいい奴ですね。最後の最後で裏切るとかいう展開はきっとないと信じています(笑) がんばりましたね、アレン君。
女の子とはいえ、気を失った人を運ぶのは重いっす。 (こないだ、職場で派遣さんが倒れたとです。 石和、必至に抱きかかえたデス。泣。オモカッタ…) 命の重さ。 言葉で説明されるより、体感したときの方が、それを実感しなすよね。 これから、アレン君がどうなるのかますます気になります。 ごめんなさい、マシュウさんもう完璧チョイ役;;
町の人たちがなぜ暴徒と化したのか…… 次回をお楽しみにw ジャンはいい奴ですw いいやつなんですよ!(何 アレン君奮闘してます。
なんか悲しいですけど; >こないだ、職場で派遣さんが倒れたとです。 そ、それは大変でしたね;; 脱力した人って重いですよね;;; なんにしろ、お疲れ様です。 石和さんも無理はなさらぬよう。 命の重さ…… ですね、体感してみないとわからないものかもしれませんね。 人間って結構もろいものですよね、だからこそ命は重い……同じ人間はこの世に二人いませんし。 なんで急に襲撃されたのか・・・。
アレンがいない間に何かあったのでしょうかね? しっかし。いい友人ですね〜ジャンって。ほんと。このまま二人の友情が続いてくれることを願いたいです。 アレンのいない間に何があったのか……
次回をお楽しみにw ジャンはいい奴ですw でもやはりこの少年が隠れ家とかを持っているというとこには…… ジャンカッコいいっっ
と、思ったウィスペルです マシュウさんは・・・一体・・・・どこへ・・・ ジャンはこれから少し活躍しますw
裏の顔も……; マシュウはもう少しで出ます; 銀蛇さん、こんばんは。
今回のタイトルは「重み」ですか――すごく意味深で、幅がありますね――タイトル付け、意外と難しいですよね☆ アレン君、友人のおかげで今回はうまく逃げきりましたが、悪い噂が広まるのだけはなぜかすごく早いからコワイ! また追手が掛かりそう―― みなさん、マシュウの登場を心待ちにしていらっしゃる様子――正直、わたしもそろそろシビレが切れそうです(笑) 次回をひそかに期待して――おやすみなさい、です。 今回のタイトルは正確には”命の重み”になるかと;
沙羅の木さんのおっしゃるとおり、タイトル付けにはいつも悩まされます; ダブりそうになることもしばしば(をぃ いっそのことタイトルつけるのやめようかと何度思ったことか;; でも一応スタイルなんで貫いてますが。 数字だけよりはどこまで読んだか覚えやすいかな〜……なんて;;(気のせい? 悪い噂って本当に怖いですよね……知らないうちに広がっていく恐怖;; 普段から行動に気をつけないといけませんね;; 私は普段から粗ばっかりですが(ry マシュウ……なかなか出せず、すみません; これくらい小出しにしてるとなかなかストーリ進まなくて… でもあまり多く載せると……(ry 次回、ご期待に沿えるでしょうか…… お休みなさい。 ついに異変が!!
やはり死人はただでは帰ってこないんですね ジャンは何か知ってるご様子w やっとこ”転”です;
その通り、ただで死人は蘇りません。 ここから物語りはどう転がっていくのか。 おたのしみにw |
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