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2008-03-08 Sat 18:08
血の色の夕日が町を染める頃、ぼくたち三人はジャンの隠れ家を出た。
裏路地を通り、慎重に進んでいく。 こんな夕暮れのときをどう言っただろうか・・・母さんが優しかったころ教えてもらったが、もう忘れてしまった、とにかく、こんな夕暮れのときは殆ど誰も出歩かない、だからぼくたちは敢えて日が沈みきる前にジャンの隠れ家を出たのだ。 裏通りは静かだった、ジャンが少し先導する形でぼくと、あの後程無く気がついたエミリが歩いている。 「ジャン、この街から出るとしても、どの道を使うんだ?」 「・・・一番目立たない道・・・下水沿いの道を行こうと思う・・・どの通りを行くにしろ大通りに一度出なきゃならない、そのときが一番危ない・・・もう噂は町中に広まってるはずだし」 ジャンは振り向かずに言うが、その口調から深刻な顔をしていることが窺えた。 「ぼくたちが見つからずにいけると思うか?」 ぼくの問いにジャンは首を横に振り 「わからない・・・」 とだけ答えた。 エミリがぼくの服の裾をぎゅっと握り締める。 「大丈夫だよ、エミリ・・・」 ぼくは不安そうにしている妹に声をかけた。 ぼくたちが歩いていると、前方に何人もの人影がこちらに近付いてくるのが見えた。 「やばい、引き返・・・」 ジャンが振り向き様に言ったが、その言葉は途切れることとなった。 ぼくも振り返り絶句した。 後ろからも幾つもの人影が迫ってきていたのだ。 夕日に染められた彼等の姿はよく確認できないが、それぞれ手に武器を持っている。 エミリがぼくに抱き縋る ぼくは頭の中が真っ白になっていた。 ただ呆然とぼくたちに死をもたらさんと迫る影たちを見ることしか出来ない。 そんな時、突然にあたりに霧が出始めた。 影たちがどよめきその足を止める。 夕日に照らされ紅に染まった霧はどんどん深くなり、ついには影達を包み隠してしまう。 後ろを振り向くが、やはり同じように霧しか見えない。 だが不思議なことにその霧はぼくたち周りにだけは出ていない。 「何だ、この霧・・・」 ジャンが呟いたのとほぼ同時 バチバチバチィ 突然そんな音とともに霧の中で凄まじい閃光が明滅し何かが焼けた臭いが立ち込めた。 ぼくはエミリを抱き寄せ、霧を見つめていた。 ジャンも何も言わずただ霧を凝視している。 少しして、出るときと同じで不自然なほどの速さで霧は引いていった。 残ったのは倒れた人々、夕日に照らされて色を失った視界ではよくは見えなかったが、どうやら・・・それらは焦げているらしかった。 立ち上る煙と立ち込める臭気にぼくは吐き気を催し口に手を当てた。 だが、すぐにぼくはエミリに目を向けた 「ぜっぜっぜっ・・・」 エミリは肩で息をして辛そうにしていた。 「エミリ、どうした!」 ぼくはかがんでエミリの額に手を載せた。 熱が出ている。 「こんなときに・・・」 ぼくは呟いた。 「どうした、エミリちゃん苦しそうだぞ」 ジャンが心配そうに覗き込んでくる 「熱が出てる・・・こんな状態じゃ逃げるなんてとても・・・」 ぼくは苦しむ妹の姿を見ていられず目を瞑る。 「何言ってんだ、絶対守るって言ってただろ、三人でここを出るんだろうっ・・・立つんだ、ぐずぐずしてる暇はない」 ジャンの呼びかけにぼくはゆっくり目を開く。 「そうだったね・・・行こう」 ぼくは言ってエミリを抱えて立ち上がり、足を踏み出す。 「まてよ、どこにお出かけだ?」 突然後ろからかけられた声にぼくは立ち竦んだ。 聞き覚えのある声、ぼくの中で一瞬のうちに声の主のイメージが浮かんでくる。 ぼくが振り向くと、少し離れた場所にいつの間にかあの白尽くめの男が立っていた。 不気味な夕日の紅に染められたその姿は地獄の使者といわれれば納得してしまう程に異様だった。 「やっと見つけた獲物をどこに連れて行く気かと聞いてるんだがな・・・」 「なんだ、おまえは・・・」 しばし唖然としていたジャンが男を睨みつけ声を低くして言う。 「お前に用はねえ、黙ってろ・・・」 男がジャンをにらみ返すと、ジャンは居竦んでしまう。 それほどに男の眼光には威圧感があった。 「・・・にしても今度の体はそれか、さすがに意表を突かれちまったな・・・だがなぁ、いくらテメェがうまく隠れようと、オレは必ずお前を見つけ出すぜ・・・今までもそうだったようにな」 男は言って視線をぼく、いやエミリに向ける。 「・・・お前らからは臭うんだよ・・・負け犬の辛気臭ぇ臭いと・・・血腥ぇ臭いがなぁ」 男は言って口の片端を上げて笑みをつくる。 夕日の血の色とあいまってそれは凄絶な表情に見えた。 エミリは苦しげに男を見ていた。 「・・・何のことを言ってるのか分からないけど人違いじゃないのかい・・・見たとおりぼくの妹の具合が悪いんだ、急ぐからそこをどいてよ」 ぼくの言葉に男は含み笑いを漏らす 「クックック・・・わかってんだろ?、そいつはもうお前の知ってる妹じゃあない・・・確かに記憶も行動もよく似せているとは思うがな・・・違和感があっただろう・・・?」 ぼくはその言葉に大きく目を見開く 心臓が鷲攫みにされたような感覚にぼくの全身が身震いした。 「死人は決して蘇らない・・・こいつは常識だ・・・妹のことを思うなら、静かに眠らせてやるんだな」 男は左半身を覆うマントの中から何かを出す。 いや、それは物ではなかった。 腕だ。 男の体格から見ても不自然なほどにそれは大きく長かった。 この世のどんな動物のものにもたとえられない異形の腕・・・それがマントの中から現れた。 悪夢の中のような光景にぼくもジャンも声を出すことすら出来なかった。 「オレがもう一度そいつを死体に戻してやるよ」 男は鋭い眼光を瞳に宿したまま口の片端をさらに上げて笑みを深めた。 ![]() ↑一日一回ポチしてください ↑さらにこちらも一日一回……; ![]() ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「アンジェリカ」に投票 ↑ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回) ↑一ヶ月に一回こちらも。(あつかましい) 前へ●第三節12 月雫(しずく) 前へ●第三節10 覚悟(かくご) トップページへ |
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マシュウ…久々ですね。直球ですね。でも正論です。
アレンもジャンも、その真実からまだ目を背けるのか… つらいですがそれが現実なのです。生きていればつらい現実があります。でもその現実を互いに支えあって生きていく…それが人間ですよ、アレン。 たとえ遠く離れていても、二度と会えないとしても、心は常にそばに… 熱いコメントありがとうございます。
マシュウは現実を突きつける者です。 彼の言うことは粗暴ですが正論ですよね。 でも正論だけに受け入れがたいこともある…… 人として生きることはそれ自体が戦いなのかもしれませんね。 アレンはいまだ向き合えぬまま…… ジャンもまた、そうですね。 悲劇はまだ続きます。 アンジェリカ第三節はここからがクライマックス、最後までお付き合いください。 10,11読みました^^
人を食う=ハレのちグゥを連想してしまいましたw; もちろんストーリーは全く違いますが。 そして……あぁ、やっぱり予想通りのエミリちゃん;; アレンもジャンもエミリを大切に想う余り、死者を冒涜してしまってるんですよね…。 クライマックス楽しみにしてます^^ それにしても。 定期的な更新とか……凄いなと思いました。 むしろ尊敬します。 こっちは今、DQ3にはまっていまして… 結果、活動がおろそかになっています(殴) *ハレのちグゥ…気が向いたらググってみてくださいましww ではノシ ハレのちグゥ……グゥって言う女の子が謎なあのマンガですねw
変な生物ポクテ(食料、食べる気にはならない;)とか胸毛がもっさりした長老(だったよね?)がでてくるあれですよね 最初の辺見ました。 エミリちゃんは……うん、やはりそうでしたねw 今回のお話、バトルシーンもありますが、心の戦いがメインになるかと思われます。 お楽しみにw >定期的な更新とか いや、書き溜め放出系なので;; 尊敬されるようなものではないです;;; ゲームかぁ、私もミミックさんくらいの頃はゲームばっかしてました。 今はなんかやらなくなりました; 銀蛇さん、おはようございます。
いよいよマシュウの登場ですね。彼の登場には霧がよく似合ってるなぁ、とつくづく思ってしまいました☆ 血のような紅の夕日もいいですね☆ しかも臭気まで漂わせてくれる。人間界とは一線を画した生物。マシュウ、「かっけえー」と言いたくなります(笑) 四日の「ばとん」拝見しました。 京極先生の出世作「姑獲鳥の夏」――遅ればせながらつい先月拝読したばかりで、他作品も読んでみたいなと思っていたところです――分厚いものが多いので時間が掛かりそうですが。 マシュウ、この落とし前、どうつけるのか? 彼の力量がとても楽しみです☆ 返信が遅れてしまったようですが、おはようございます。
ちょうど友人との約束で出かけたのと入れ違いになったようです; マシュウさんいよいよ登場です。 ”逢う魔が刻”が彼には似合います。 霧……実は……いや、これの種明かしは次回にしましょう。 彼は人間とは比べ物にならない嗅覚も持ち合わせているらしいです。 なにはともあれ「かっけえー」との言葉ありがとうございます。 京極夏彦先生、すごく長い作品が多いですよね。 がんばってください。 次週もお付き合いください。 急展開!
やはり、マシュウさんかっこいい。 それにしても、エミリちゃんの中にいるのは一体誰なんですかね。 急展開ですね。
マシュウさんかっこいいといってもらってうれしいです。 エミリちゃんの中身……それは、 ……秘密で(をぃ あ!!
ついにマシュウ様がっっ エミリちゃんの皮をかぶっていらっしゃるのは一体・・・(皮言うな 気になりますっっ マシュウさまついに本格登場です。
エミリちゃんはどっちかというととりつかれてます。 続きをお楽しみに。 やはりエミリは乗っ取られていたか。
でも今回黒幕の正体のヒントがないぞ? 見逃しているだけかな?w さあさ、中身は誰じゃろな?w ついに衝突ですか
マシュウさんはやはり躊躇い無くw ジャン逃げて!(ぇ ええ、エミリ乗っ取られれてまス;
見逃してはないかも 今回黒幕は……ぽっとd(ry マシュウさんに躊躇はありません(をぃ
ジャン……もしかしたら蒼月樹さんの予想通りの展開になるのかも; 出てきたと思ったら、
…マシュウ、容赦なさそうですね。 でもひさびさに「クックック」が聞けてうれしいです。 たそがれ時は、ホント危険です。 うちの近所はよく痴漢がでますから(←違っ)。 こちらも呼んでいただいてどうもです。
容赦ないですねマシュウは; 含み笑い…… マシュウ……すっかり悪役が板について(TT 痴漢……気をつけて; これから先休眠期に入っていた変な人達が目覚め始めますから(をぃ エミリは乗っ取られているだけなのか、中身ごと変わっているのかねえ?
化け物が化け物であるためには食欲が大事なんだ! マシュウも丸めてシュウマイにしてしまえ(なんだこの無理やり感は…) つまり、肉団子。 乗っ取られてるという表現が近いでしょうか……
たぶん(をぃ そうかもしれませんねw ぬこさんの作品にもこういったシーンがあったのを思い出しますww |
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