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アンジェリカ第一節⑥ 洗礼(せんれい)
2007-08-19 Sun 10:26
 夜、廃屋に焚き火の火の粉が舞う。

 私と男は無言で焚き火を見ている。

 私は結局あの後も男と行動を共にした。

 男の傍らにはあの炎の形の剣が無造作に置いてある。

 タニアたちと戦っているときは夕日に染め上げられて色の判別が出来なかったが、ここではその刀身が白色であることがわかる。

 気まずい静寂が辺りを支配している。

「さっきは…ごめんなさい…」

 私は男に詫びた。

 今考えれば、あのままタニアに連れて行かれていたら、どうなっていたのか分からない。

「謝ることはねぇだろ、お前は人間として当然の感情を抱き、俺にぶつけた、そして俺はそうされて当然のことをした…それだけだ」

 男から帰ってきた答えは意外なものだった。

 そして、それはあのとき抱いた感情を思い出さずにいられないものだった。

 あの、煮え滾(たぎ)るような感情
 私がそんな思いに耽(ふけ)っていると、男は突然立ち上がり服を脱ぎ始める。

「な、なにを…?」

 私はあまりのことにあっけにとられながらも男に問う。

「着替えるんだ、見たいんなら見ててもいいぞ」

 男はその逞(たくま)しい上半身を晒(さら)して意地悪な笑みを浮かべる。

 私は慌ててそっぽを向く。

 頭に血が集まったらしく顔が火照る。

 考えてみれば服がぼろぼろになれば着替えるのは当たり前だ。

(あれだけの戦いをしたんだもの…)

 そう考えて私はあることに思い当たる。

 先ほど見た男の体に傷が無かったように思えたのだ。

 私はそっと男のほうに視線をやる。

 男は上着を着ているところだった。

 その体には傷は無い。

「何だ、やっぱり見たいのか?」

 服から顔を出した男に声を掛けられ私はあわててまた男から視線を外した。

「おい、終わったぞ」

 少しして男が声を掛けてくる。

 見ると、男は前と同じ新しい白尽くめの服に着替えて向かい側に座っている。

「…あなた、傷は?」

私は戸惑いつつも男に問う。

「丈夫さだけが取柄でな、あんなかすり傷なんざつくそばから治っちまうんだよ」

 男は言ってズタ袋から乾パンを取り出し、私に放ってよこす。

 私は慌ててそれを受け止める。

「腹は減ってないか?、まぁ、俺は食わせてもらうがな」

 男は言ってもう数個取り出していた乾パンを齧(かじ)り始める。

「…どうして…タニアはあんな力を得たの…?」

 私は男に問いかける。

 男は食べる手を止め真剣な眼差(まなざ)しで私を見る。

「知ってどうする、あんたもあの力を求めるのか?」

「私は知りたいの、今何が起こってるのか、どうしてこんなことになったのか、なんで…タニア達があんなことになったのか、本当のことが知りたいの」

 私は男に今の正直な思いをぶつけた。


⑥-1
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



 男は私の瞳を真正面から見つめ返してくる。

 少し時間が経ったころ、ふと男は目を瞑り、口を開いた。

「…あいつは、洗礼(せんれい)を受けた…」

「洗…礼?」

 聞き慣れた言葉だった。

 聖職者になるときその儀式は必ず受ける。

 そのときに洗礼名を貰い、晴れて聖職者として認められる。

 私達はそれを受けるためにこの聖地にきて修行に励んでいるのだ。

 しかしここではその意味が違うのは明白だ。

「人が、人の命を喰らって人外のものになる儀式…それを奴等は洗礼と呼んでいる」

「それって、生贄なんじゃあ…」

 私が声を上げる

 生贄など邪教の儀式だ。

 男は瞼を上げ

「そうともいうな、そしてあいつ、タニアは恐らく…お前を最初に襲った五人の命を差し出してあの力を手にした…あの五人の死体を操っていたのも恐らくあいつだ」

「!」

 私は目眩(めまい)を感じた。

あのタニアが、人を犠牲(ぎせい)にして力を求めたというのか。
あまつさえ、死者の体を操るなど…

私は信じられなかった。

「信じられないってツラだな…だがな、テメェの命が危険にさらされりゃあ、他人を犠牲にしてでも生き残ろうとする、それが人間ってもんだろう?」

 男は嘲笑(ちょうしょう)を浮かべる。

 私だけではない、それは人間という存在すべてに向けられたものだった。

 私はタニアとのやり取りを思い出す。

 確かにあれはタニアの本心だったのかもしれない、でも、それでもあのタニアが他人を犠牲にしてまで力を求めるとは思えなかった。

「タニアは…脅されてあんなことに…」

 私は呟く。

 そうだ、脅されてあの力を得たタニアはその力で狂ってしまったのではないか、だからあんなことを言ったのではないのか…。

「さてな、もしかしたら奴等に命乞いしたのかもしれねぇぞ、他の奴等はどうなってもいいから自分は助けてくれ…とな、それとも、あんたを売ったのか」

「タニアはそんなことはしないっ!」

 私は叫んだ。

 それでも男は嘲笑を崩さない。

「人間ってのはな、いつもはどうだのこうだのと綺麗ごとやら見栄なんていう仮面被って澄ましてるが、いざというときには地金を晒すもんだ、醜い素顔をな」

「………!」

 私は、少しの間言葉を失う、そして、また感情が沸騰し始める。
私が口を開こうとしたとき男はマントに右手を入れる。

 そして、次の瞬間には腕が翻り、剣が投げられる。

 ダスンッ

 バッサバッサ

 剣は窓の穴から夜の闇に吸い込まれ、何かに突き立ったらしい音と鳥の羽音が重なるが、明かりの外で見ることはできない。

「逃がしたか…それにしても闇夜に烏(からす)とは珍しいこともあるもんだ」

 男は言って笑みを浮かべる。

「烏…烏がどうしたって…」

 私はそこまで言って思い出す。

 鳥類は一部を除いて夜目が利かないことに。

 そして、男は突然立ち上がる、。

「どう…したの?」

「烏が面白い客を連れて来たようだ…」

 私の問いかけに男は凄みのある笑みを浮かべる。

 少しして、鎧を纏った男たちが、廃屋に入ってくる。

 私たちは立ち上がり彼らと向かい合った。

 彼らの鎧につけられた四枚の翼の前に二本の剣が交差した印章

「聖剣騎士団(スウォルド)!」

 私は声を上げた。

 正しくは四翼聖剣騎士団、四翼聖教の誇る三大騎士団の一つだ。

「…私は四翼聖剣騎士団、第二師団団長のマルコ・オーウェンだ、シスター見習いの拉致、及び殺害の容疑でそこの男、汝を四翼聖剣騎士団と正義の名の下に連行する、おとなしく縛につくがいい、抵抗するならばこの場で処刑を執行する」

 抑揚のない声で、騎士の一人が言った。



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この記事のコメント
へぇ~、そうだったのか。しかしなぜ見習い修道女をターゲットに…(戦闘力よわそう。洗礼を受ければみんな強くなるのかな?)

今日はもう少し読みます。これは独り言なので返信無くてもOKです^^
2007-11-02 Fri 21:01 | URL | Michi #goVLvfsE[ 内容変更] | top↑
洗礼怖いな…おれもうけたら強くなれるかな。

あと、またブログのデザインが変わって見やすくなってますね。トップの絵もすばらしい。

早速まねさせていただきます。では
2007-12-17 Mon 16:51 | URL | 国民突撃兵 #-[ 内容変更] | top↑
国民突撃兵さん
受けないほうがいいですよ;

見やすくなったとのお言葉ありがとうございますw


2007-12-17 Mon 20:56 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
ちんたら読んでます、お久しぶりです。
展開がいいですねぇ・・・。最後に大きな勢力を出すとこらへんがくすぐられます。
男の言葉が真実に近いので、飽きないですね。
2008-04-02 Wed 23:06 | URL | 脳内願望人 #d3xRQPUk[ 内容変更] | top↑
脳内願望人さんへ
お久しぶりです。
読んでいただいてありがとうございますw
自分のペースで空いた時間にお付き合いいただければ幸いです。

お褒めの言葉ありがとうございますっ
展開や構成はいつも頭を痛めているのでうれしいです。
彼の言葉は真実を突きつけてきますよね。
これからも気長にお付き合いいただければうれしいです。
2008-04-03 Thu 18:34 | URL | 銀蛇 #-[ 内容変更] | top↑
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