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アンジェリカ 第一節⑦ 記憶(きおく)
2007-08-19 Sun 10:44
「聖剣騎士団(スウォルド)!」

 私は声を上げた。

 正しくは四翼聖剣騎士団、四翼聖教の誇る三大騎士団の一つだ。

「…私は四翼聖剣騎士団、第二師団団長のマルコ・オーウェンだ、シスター見習いの拉致、及び殺害の容疑でそこの男、汝を四翼聖剣騎士団と正義の名の下に連行する、おとなしく縛につくがいい、抵抗するならばこの場で処刑を執行する」

 抑揚のない声で、騎士の一人が言う。

 彼は明らかに他の騎士達とは違った。

 冑(かぶと)は被っておらず、鎧はつけているが、他の人がつけているごつごつした物々しいものでなく、どこか優美さを感じさせる。

 全体的に線が細く、切れ長の鋭い目が私たちを捉えている。

「ほう、洒落た客が来たな」

 男は言って右手で私の肩を抱き寄せる

 私が身じろぎしようとしたとき、私の喉元(のどもと)に鋭い爪が突きつけられた。

 騎士団の間から声が上がる。

 この異形の腕を見せられれば、こういう反応をするのが当たり前だ。

「六人殺すのも七人殺すのも大した違いじゃあない…そもそも、どうせ俺を捕まえたら大人しくしようがすまいが殺すんだろう、違うか?」

 男の言葉に騎士たちは殺気立った視線を男に向ける

 中には「卑怯な」などと言う者もいる。

「言っとくが俺は正義なんていう殺し合いの大義名分と、弱い奴を踏みつけにする言い訳くらいの役にしかたたねぇものは一切信じちゃいねぇ、ついでに言うとテメェらが卑怯とほざくような方法以外で生き残るための選択肢を選べるほどに余裕のある生き方もしてねぇんでな…分かったら、道をあけろ」

 男は口元に笑みを浮かべ痛烈な皮肉を口にする。

「…やれ」

 先ほど口上を述べた男、マルコの言葉に、騎士たちが一斉に彼を見る。

「し、しかし団長、奴は人質を…」

 その隣にいる騎士が戸惑いがちに言う。

「人質をとられた程度でこの男を取り逃がしたとあっては聖剣騎士団の名折れとなろう…それに、正義を貫くのであれば犠牲は付き物だ」

 マルコは冷淡に言い、切れ長の目を細める。

「素敵な正義感だな、テメェ以外の人間の命なんざ虫けら以下ってか?…いや、さっきのは失言だったな、あんたはとっくの昔に人間を捨ててたんだっけか、元神父様よ?」

「何をしている、かかれ」

 意味深げな男の言葉を無視しマルコが号令を飛ばす。

 騎士達は剣を抜き放ち構える。

 ドン

 男が私を後ろに突き飛ばす。

「いいだろう、そういうつもりなら相手をしてやる」

 男は言ってあの炎の形をした大剣を拾い上げ構える。

 純白の刃に火の影が躍(おど)る。

「大好きな天使様の下へ行きたい奴からかかって来い、盛大にこの世との別れを祝ってやろうじゃねぇか」
 男は言って不敵な笑みを浮かべた。


⑦-1
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 騎士の一人が男に斬りかかる。

 それが、惨劇の始まりとなった。

 男の大剣が白い残像を残して振り抜かれ、騎士の上半身と下半身が甲冑ごと切り裂かれる。

 血と臓物が切り口から撒き散らされ、血臭が辺りを覆う。

 騎士達がさすがに怯む

 それを男は見逃さない。

 素早く騎士達との間合いを詰めて、剣を一振りする。

 それに巻き込まれた数人の騎士が一撃の下に絶命、運のいい者でも腕が半ばから斬られ、悶絶している。

 そして、当然廃屋内がパニックに陥る。

 逃げようとする騎士達が出入り口に殺到する。

 男はそれ以上何もしようとせずその様子を眺めていた。

 その混乱に乗じて騎士の一人が私に近づいて手を差しのべてくる。

「早く、今のうちに」

 騎士が言ったとき、その胸から白い切っ先が突き出てくる。

 騎士は暫く呆然とそれを見ていたが、やがて口から血を吐き出し、痙攣し始める。

 傷口から噴き出した血が私の頬に散る。

「あ…」

 私は声を上げた。

 私の二人の中年の男女の姿が浮かぶ。

「父さん…母さん」

 私はその男女を呼んだ。

 次の瞬間、父親の胸から白い何かが突き出す。

 父は口から血を吐き絶命する。

 そう先ほど目の前にいた騎士のように…。

 父は無残に投げ捨てられ、父の後ろの加害者の姿が私の目に入ってくる。

ドサ

 騎士が投げ捨てられ、床に落ちる音が私を現実に引き戻す。

 目に入ってきたのは、返り血にまみれた男の姿。

 思い出した…そう、父と母は、この男に殺された…

 父は背後から刺され、母は斬り殺された。

 私は、きつく手を握り締める。

 私の目に、倒れている騎士の腰につけられた短刀が映った。

 騎士たちは、一人を残して全員去っていった。

 残ったのはマルコだ。

「やはり、人間ごときでは歯が立たぬか…」

 マルコは頬についた血を親指でふき取りそれを舐める

「よう、十年越しの決着でもつけるか?」
 
 男の問いにマルコは少し笑い

「そう焦ることもないだろう、じきにまた機会は来る…」

 言い残しマルコは去っていく。

「さて、とりあえず…」

 男はそこまで言って言葉を途切れさせその表情を強張らせる。

 私は、男の腹に短剣を突き刺していた。


⑦-2
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 男は私を突き飛ばす。

 私は半ば吹飛んで倒れこんだ。

「面白ぇことしてくれるじゃねぇか…だが…こいつじゃ俺は殺せねぇな」

 男は言って短剣を無造作に引き抜き私の目の前に放る

 カラァン

 赤い血にまみれた短剣が乾いた音を立てて床に落ちる。

「父さんと母さんを…あなたは…殺した!」

 私は半身を起こし、搾り出すように言う。

 男は、暫く目を瞑り黙っていた。

 少しして男は目を開き口の端を上げる。

「思い出したか…そうだ、俺がテメェの親父とお袋を殺した」

「あなたは…!」

 私は男を睨み付ける

「俺が憎いか?、憎いだろうな、お前にとって家族といえる奴を三人も俺に殺されたんだ、憎まないほうがおかしい…」

 男は騎士の死体が持っている剣を拾い上げ

「俺が憎いなら、そこに転がってるような玩具じゃなく、こいつでかかってきたらどうだ、もしかしたら俺を殺せるかもしれねぇぞ」

 男は私の目の前に剣を放る。

 短剣のときとは違い、重い音が響く。

 私は剣を手に取る。

 短剣とは違いずしりとした重みが手にかかってくる。

「ただし…俺はそいつを向けてくる相手に対する返礼を一つしか知らねぇ…あんたも、そいつを誰かに向けるなら覚悟を決めるんだな」

 男の言葉に私は動きを止める。

そして、自分が何をしようとしていたのかに気付く。

 私は、剣を手放した。

 いつの間にか、私の頬を熱いものが伝っている。

私はそのまま泣き崩れた。

「どうしてっ…どうしてなのっ…私はただ…ただ平穏に暮らしたいだけ…なのに、なんでこんな、こんなことに…!」

 私は、素直な胸の内を吐露(とろ)する。

 シスター見習いとしてこの聖地イスタに来たのもそのためだった。

 ただ、平穏に暮らしたかったのだ。

「この時代に生まれた時点でそんなことは無理だろうよ、いや、どんな時代に生まれたところで、平穏なんてのはないのかも知れねぇな、人間が人間として生きる限りは・・・な」

 男の言葉には、どこか悲しみがこめられているように感じた。

 私は、涙をぬぐい立ち上がり、歩き出す。

「どこへ行く気だ?」

「…もう、あなたとはいられない、教会にも、帰らない」

 私はそう告げて廃屋を出て行く。

「お前一人でどこに行けるってんだ、当てもねぇ癖に、ついでに言ってやる、奴等の狙いはお前だ」

 後ろからかけられた言葉に答えず、私は闇の支配する聖都に飛び込んだ。



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この記事のコメント
とりあえず、一通り読ませていただきました。
故に感想を。
二話(だったかな)で述べたこと以外に気になったことはありませんでした。
まあ、批評とかは苦手なので、そこはご勘弁を。

面白いですなぁ、こういう作品は好きです。
全く関係ないですが、読んでいると「キーリ」という本が浮かびます。
どことなく、似ている気がしますね^^
別に似ているからだめとか、盗作だとか言ってる訳ではないのでご安心を。

がんばってくださいな~♪
2007-08-19 Sun 16:16 | URL | ベーコン #a2PHbR9c[ 内容変更] | top↑
足しげく通っていただいて、こうしてコメントでお褒めの言葉までいただけるなんて・・・。
このブログを立ち上げてよかった・・・
ベーコンさんとお会いできた幸運に感謝です。
がんばりますよー!

「キーリ」という本、読んだこと無いので読んでみようと思います。
面白い情報ありがとうございます。


2007-08-19 Sun 19:12 | URL | 銀蛇 #-[ 内容変更] | top↑
誰かにあえて良かった。
そう思えるときがありますよね^^
自分の場合はよしさんかな、やっぱ。

「キーリ」はこれも宗教をメイン要素とした小説ですね。
ですが、ラノベですよ~(ぁ
電撃刊行ですよ~(ぁ
結構おもしろいですよb

2007-08-19 Sun 21:38 | URL | ベーコン #a2PHbR9c[ 内容変更] | top↑
好いですね~、やっぱり戦闘は好きです。
特にファンタジーならガチバトルがないと燃えないっ。

欲を言うともうちょっと描写が欲しかったかも。
廃屋の中にどのくらい兵士がいたのかとか、
そこであの大きさの剣を振り回すとなると2~3人同時にぶった斬れそうだな、とか。その辺でドキワクしてしまうのです(笑

続き楽しみにしてますよ。
2007-08-20 Mon 00:20 | URL | 芥子果 #WzzJX4NY[ 内容変更] | top↑
ベーコンさん、芥子果さん、コメントありがとうございます。
お二人に会えたことを改めて感謝です。
小説ほめていただいて感謝です。
冥利に尽きます。

描写については素直に力不足でございます。
精進します。

まだまだ至らない文章ですがお付き合いいただければと。
2007-08-20 Mon 20:38 | URL | 銀蛇 #-[ 内容変更] | top↑
 はじめまして。紗羅の木と申します。訪問履歴からお邪魔させて頂いております。
 ダークな雰囲気の物語ですが、非常におもしろそうです。
 本日はここまで拝見させて頂きました。
 読む速度が遅い方なので、現地点に辿り付くまで時間が掛かりそうですが、また伺わせて頂きます。
 ブログのネーミング、とても良いですね。
 
 


 
 
2007-11-04 Sun 11:08 | URL | 紗羅の木 #EBUSheBA[ 内容変更] | top↑
紗羅の木さん
私の巣にようこそ。
コメ残さなくてすみません、近日中にお伺いいたします。

面白そうといっていただいてありがとうございます。
紗羅の木さんの都合とペースに合わせてお付き合いいただければ幸いです。

ブログのネーミングほめていただいて///
ありがとうございます。

またのお越しをお待ちしております。
2007-11-04 Sun 11:45 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
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