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アンジェリカ 第一節⑧ 不変(ふへん) 
2007-08-22 Wed 19:46
 月も出ていない空、誰もいない路地……

 夜の闇は非情なほどに暗かった。

 夜気は身を刺すように冷たい。

 私は、廃屋らしき家の軒下で壁に寄りかかっていた。

 ため息が白い形をとって吐き出され、霧散していく。

 男の言ったとおり、当てなどない。

 私が行く所などなかった。

 私は、帰る場所を失った。

 いや、今までいた場所すら、私の居場所ではなかった。

 私は無言で星一つない闇に包まれた空を見上げ、首にかけた聖印を握ろうとする、しかし、それはなかった。

 気付かなかったが、どこかで落としたのだろうか……。

 私はもう一度息を吐き出す。

 そして、私は違和感を覚える。

 十年前の記憶、それに対する違和感。

 私は少しの間考えていた。

 そして、あることに気付く、あの男がまったく変わっていないのだ。

 あれから十年経っている、十年前私は小さかった。

 タニアも含め、十年の月日のうちに周りはすべて変わったといっていいだろう。

 だが、変わっていないのだ、あの男は十年前とほぼ寸分違わぬ姿で私の前に現れた。

 本当にあの男はいったい何者なのか本当に化け物だとでも言うのか……私は身震いした。

 そのとき、足音が聞こえてくる。

 そちらを向くと、こちらに近付いてくる明かりが目に入る。

「!」

 私は慌てて廃屋の影に身を隠す。

 明かりはどんどん近付いてくる。

「あ……」

 私は、明かりをもっている人物を確認し、思わず声を上げた。

 彼女が、それに気付いてこちらに目を向ける。

「……その声は、シスター・ケイト……?」

「シスター・マリアベル……」

 私は彼女の名を呼んで廃屋の影から出る。

「よかった、無事だったのですね」

 言ってシスター・マリアベルは温和な笑みを浮かべる。

 私は、目頭が熱くなるのを感じる。

 そして、私は彼女に抱きつく。

「あらあら、よっぽど怖い目にあったんですね、でも、もう大丈夫よ」

 シスター・マリアベルは私を撫でながら言う。

「他の六人……特にあなたの親友のことは残念だったけど、あなたが無事でよかったわ」

 私はその言葉に違和感を感じて、彼女から身を離す。

「どうして……タニアが死んだことを知っているんですか……タニアの死体は残らなかったのに」

 私の問いに彼女は答えなかった。

「それに、こんな時間になんであなたが出歩いているんです?」

「それは、あなたが心配だったから……」

「でも、他の子たちがいなくなったとき、あなたは動こうともしなかった……」

私はなおも彼女に問いかける。

シスター・マリアベルは苦笑する。

「嘘はばれるものね……騙されてくれていれば、楽に連れて行けたんだけど……」

⑧-1
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 シスター・マリアベルの言葉に私は後退る。

「さあ、行きましょう、シスター・ケイト、怖がることはないわ、あなたは選ばれし者、誇りに思っていいのよ、何せ十二使徒の一人にその命を捧げられるのだから」

 シスター・マリアベルが無機質な笑みを浮かべ、私に手をさしのべてくる。

「そいつは素晴らしいことだな、ついでに俺もいっしょに案内してくれるか?」

 その声は上から降ってきた。

 声の主も少し遅れて降り立つ。

 ランプの明かりの中に降り立ったその白い姿は、天使を思わせた。

 白いマントがまるで羽根のように広がり、流れる銀の髪がランプの光を受けて淡い光を放つ。

 しかし、露になった左腕は醜い異形のものだ。

 マントと髪が降り、異形の腕も隠れる。

 男は体勢を直し、シスター・マリアベルに不敵な笑みを向ける。

 また着替えたらしく穢れなき純白の旅装束と白銀の髪がランプの明かりを跳ね返しこの男の存在を誇示する。

「いいでしょう、ですが、あなたをご案内するのなら、首から上だけということになりますが」

 澄ました顔をしてシスター・マリアベルはぞっとしないことを言う。

「そうケチケチするな、十年前に殺し合いをした仲だろう?、それとも、あのときの続きと洒落込むか?」

 男は笑みを深める。

「残念ですが、十年前の決着は彼等に譲りましょう」

 マリアベルが言うと、明かりの外から数人の男女が出てくる。

 まず目に入ってきたのはぶよぶよと太った男だった。

 この大聖堂に入って一回しか会ったことはないが、この男のことはよく覚えていた。

「ハインリヒ……修道長……」

 私は呟いた。

 このイスタでも高位にいる人だ。

「ほう、元枢機卿猊下のお出ましか、あの事件で公式には死亡が発表されてたと記憶してるが……ご健勝そうで何よりだ、特に胃腸の方がな」

 男の皮肉をハインリヒは笑顔で受け止め

「こうして言葉を直接交わすのは初めてですが、なかなか愉快な方らしいですね」

 ハインリヒの言葉に男は片眉を上げる。

「名前のほうが変ってるようじゃねえか、気分転換でもしたかったのか?」

男の皮肉と共にかけられた問いにハインリヒは笑みをそのままに口を開く

「名前などただの記号、目的のためならいくらでも変えましょう」

 ハインリヒは言葉と共にぞっとするような鬼気を発した。

「聖職者にあるまじき発言だな」

 男は平然と笑みを浮かべ切り返す。

 その会話の間にも次々と人影が現れる。

 その中にはあの聖剣騎士団の団長、マルコもいた。

 男がマルコに目を向ける。

「言っただろう、じきにその時は来る……とな」

「少々早過ぎだな・・・まぁいい、相手になってやる」

 マルコの言葉に男は答え、白い炎を模した大剣を構える。

 突然に私はマリアベルに抱え上げられる

「!」

 私が驚いているうちにもマリアベルは人間離れした速度で走り始める。

 私は離れていく男とマルコ達の対峙を見る。

 男が大剣を振り上げ、凄まじい勢いでマルコに斬りかかる。

しかし、それは、間に割り入ったハインリヒによって素手で受け止められる

 バキィィィィィン

 そして、男の大剣が半ばから折られた。

 そこまでが、私の見たこの戦いだった。



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この記事のコメント
そ、そんなに敵だらけだったのかー!
マリアベルさん、ちょっと恐いよ!(笑
ケイトは超重要人物なんですね。しかしまだ謎だらけ…。

もうちょっと読みますね。
2007-11-02 Fri 21:12 | URL | Michi #goVLvfsE[ 内容変更] | top↑
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