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ネクロマンサー
2014-05-04 Sun 11:18
 辺りを包むのは漆黒の深い闇。
 その中でパイプオルガンの音色が響き渡る。
 澄んだ音色が幾重にも折り重なり合い、荘厳な音楽となり奏でられ闇を彩る。
 曲はレクイエム。
 まるで天使達が悼み歌っているかのように思える程卓越した演奏……
 誰も聞く者のいないその曲は、ただ奏でられ続ける。
 それを遮るように突然分厚い扉が跳ね開けられる。
 外から吹き荒ぶ嵐の起こした風雨と共に、鎧を着た一団が教会に物々しい金属音をまき散らしながらなだれ込んでくる。
 しかし、その進撃はすぐに止まる。
 教会の中は咽返るような血の臭いと腐臭で満たされていた。
 その密度に思わず彼らはたじろぐ。
 しかし、そんなことにはお構いなしにパイプオルガンは鎮魂の聖歌を歌い続ける。
「そ、そこまでだ邪悪なる異端者よ、私は聖騎士団団長のマルコ=オルウェンだ、我ら聖騎士団に降るならばよし、手向かうならばこの場で神の御名に於いて裁きを下す」
 剣を掲げた男の声が響く。
 少しその声は震えていた。
 彼らの持つ松明が、周囲の闇を幾何か薄めるものの、教会の奥を照らし出すには至らない。
 そして、漸く深い闇の先から流れる聖歌が止む。
「漸く来ましたか、歓迎しますよ、聖騎士団の皆さん、手持ち無沙汰だったもので、つい演奏に興じてしまいました」
 闇の向こうからどこか飄々とした声音が響き、何者かが椅子から立ち上がる音が微かに聞こえた。
 聖騎士団は皆、固唾を飲んだ。
 吹き荒ぶ風と打ち付ける雨音だけが辺りを包む。
 その時、唐突に雷鳴が轟き、窓から差し込んだ稲光が一瞬教会の中を照らし出す。
 闇の先に垣間見えたのは撒き散らされた紅と、その中に独り佇む男の背中。
「貴様がこの町をこうしたのか」
「その通りです」
 マルコの問いかけに、事も無げに闇の底から返事は帰ってくる。
「……っ、このようなことをしてタダで済むと思っているのかっ」
 一瞬言葉を詰まらせ、マルコは怒りを込めた叫びを発した。
「無論、ただで済むとは思っていませんよ」
 恐ろしいまでに平静な声と共に、足音が近づいてくる。
 聖騎士達は身構える。
 松明の炎にその身をさらした男の姿に聖騎士たちは戦慄する。
 男は、その全身を血で染め上げていた。
「私の名はレインフォルト=アーデルハイム……あなた方聖騎士団に投降いたします」
 深々と一礼し発せられた男の言葉に、場は呆気にとられる。
「さあ、連れて行ってください、それがあなた方の仕事でしょう」
 頭をあげ両手を差し出す男に促され、聖騎士の一人が縄を打つ。。
「来い」
「そう乱暴にせずとも行きますよ……おっと、そうでした」
 レインフォルトが乱暴に引かれて顔をしかめた直後、何かに思い当たり声をあげる。
「司教様はこの奥にいますよ、生きています」
 レインフォルトはマルコに微笑みかける。 
「本当かっ、お前はそいつを連行しろ、我々は司教様を救出する」
 マルコは急いで聖騎士団に指揮を飛ばす。
 そして、レインフォルトは聖騎士に連行される。
 慌ただしく動く聖騎士達を背にレインフォルトは囁く。
「そう……”生きては”ね……」
 その口元は歪な笑みを浮かべていた。
 そして、轟く雷鳴と、背後から響き渡る絶叫が、嵐の夜を引き裂いた。

 

 レインフォルト 近日公開?
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