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アンジェリカ 第一節⑪ 識者(しきしゃ)
2007-08-26 Sun 07:26
「さて、やっと真打(しんうち)の登場か……」

 男は表情を不敵な笑みに変え何者かに語りかける。

「フム、今回もたいした暴れっぷりだ、感服するよ」

 広間の中央に忽然と黒い影が現れていた。

 顎鬚(あごひげ)を蓄え、礼服を着た三十代後半の男……

 その鋭い目から発せられているのは、いつも感じていた、あの見張られているような感覚。

「シェラサード……いや、今はシスター・ケイトと呼ぶべきかな、これだけ私の手から逃げおおせたのは恐らく君が初めてだろう、大したものだ……」

 礼服の男は私に賛辞(さんじ)を述(の)べる。

しかし、最初に言った名前はなんだろうか、知り合いにはいない名前だが、どこか懐(なつ)かしさを感じる名前……

「あなたは……?」

「これは失礼、記憶がないのだったね、私はグラフィアス、『福音を賜(たまわ)りし十二人』に名を連ねる者だ……あなたを歓迎しよう、シスター・ケイト」

私の問いに礼服の男は少し笑い答える。

「やっと会えたな、グラフィアス、俺は歓迎してくれねぇのか?」

 男は振り向いてグラフィアスに声を掛ける。

「君も歓迎しよう、十年前はお相手できなかったが、今回は私自ら君に引導を渡すとしよう」

 グラフィアスの瞳に赤い光が宿る。

「それにしても君の力もたいしたものだ、どんな大魔術を使ったのかは知らないが健忘暗示(けんぼうあんじ)と記憶の入れ替え・・・私ですら人間の脳に直接干渉し記憶野を自由に変換するなどという芸当は出来ない、さらに魂の封印のおまけつきだ……おかげで彼女を探すのに苦労したよ、なにせこの辺りの彼女と同じ年頃の娘を、ほぼ全員集めたのだからね」

私の脳裏に今は瓦礫の下敷きになっている同僚たちの姿が浮かぶ。

彼女たちがああなったのは……私のせいだというのか……

私はやりきれない心の痛みに苛まれる。

「いろいろと誤解をしてるようだが、そいつは手間をかけたな……俺のほうもお前を探したぜ、お互い十年待ったんだ、早速始めようじゃねぇか……宴ってやつをよぉ!」

 男は語尾を叫んで地をけり、グラフィアスへと肉薄し異形の左腕を振り下ろす。

 だが、グラフィアスはそれを平然と片手で受け止める。

「……ふむ、確かに祝福を受けた我が眷属を何体も屠(ほふ)ってきただけはある……だが、少々拍子抜(ひょうしぬ)けかな」

 グラフィアスが言った時、私の周りを囲むように白い炎で描かれた文字が幾つも現れる。

 次の瞬間空気、いや、大気が震えた。

 マリアベルの羽音の衝撃波など及びもつかない破壊が辺り一帯の形あるものすべてを襲い、その全てを瓦解(がかい)させる。

 視界を覆い立ち込める土煙が晴れたとき私が目にしたのはその殆どが破壊しつくされた聖堂と降り注ぐ月影の中に佇むグラフィアスの姿……

「ふむ……加減したとはいえ、この程度の力しか出せぬとは……情けないものだ」

 グラフィアスは呟く。

 私は、その場でへたり込みただ唖然(あぜん)としていた。

 何が起こったのか理解できない、こんな力を持った人間がいるはずがない……。

だが、全ての衝撃や瓦礫は白い炎の模様によって防がれたらしいのはわかった。

「あなたは……あなたは一体……」

 私はグラフィアスに問いかける。

「私は御使いの代行者……真の御使いの教えを識(し)るもの……」

 グラフィアスは歌うように、そして祈るように答える。

「真の……教え……?」

 私は呟く。

「そう、聖天使は三つの教えのいずれかによって世界を導くよう定められた……秩序・欲望・憎悪……そして私は憎悪を信奉(しんぼう)する四人の一人・・・」

 グラフィアスは手を広げた。

 月光を浴び、天を仰ぐその表情は狂信者のそれだ。

「憎悪が……何を生むというんですか!?、あなたは、狂っている!」

 私の言葉にグラフィアスは私を見下ろして微笑む。

 だが、その微笑の仮面の下にあるのは悪意だ……人の身では決して辿り着くことなどできないであろうどす黒い狂気と憎しみ、それこそがこの表情の本質のように思えた。

「正気などというものは千数百年前の……福音を賜ったあの日に置いてきた……ただ憎むこと、ただ嘲笑(あざわら)うこと、それこそが我が教え……」

 私は、体の底から湧き上がってくる震えをとめることができず、それ以上言葉を口にすることができなかった。

 この男は本当の悪魔だ……虚(うつ)ろな笑みを浮かべて人という存在を嘲笑い、人という存在自体に敵意を向けている。

 純然たる敵の存在、それが目の前にいる。

「さあ、儀式を始めよう、十年前にできなかった儀式を……」

 グラフィアスは笑みを消し私に近付いてくる。

 私が退がろうとしたとき

「動くな」

 声と共に男が瓦礫(がれき)を押しのけてその姿を現す。

 もう服はその原形をとどめていなかった。

 上半身は裸といっていい、いたるところにできた傷から流れ出ている血が痛々しい。

「アンジェリカから離れるな……離れるなら、俺がこの場でお前を……殺す」

 男の言葉に込められた鬼気に私は凍りつく。

その瞳には、グラフィアスと同じ赤い光が灯っている。

「まだ生きているのか、あきれた生命力だ」

 グラフィアスが冷ややかに男に対して言う。

「どうやら地獄から受け入れを拒否されているようなんでな」

 男は口の片端を上げる。

 話している間にも、男の傷がものすごい速さで塞(ふさ)がっていく。
「ならば、聖天使の御許(みもと)に送ろう」

「そいつは尚のこと無理だな、お前らの天使様は選り好みするらしいじゃねぇか」

 男の皮肉にグラフィアスは苦笑を浮かべ

「彼女の慈悲は総ての者に等しく注がれている……滅びという名の救い、それこそが彼女の愛」

「高尚な説教をありがとよ、だが生憎(あいにく)俺には学ってやつがなくてな……小難しい話はやめて、化け物は化け物らしく手っ取り早く殺し合いとこうじゃねぇか」

 男は顔の前に異形の左腕を翳す。

「生き急ぐのも死に急ぐのもあまり賢い生き方ではないと思うがな」

「ご親切なご忠告を重ねてどうもありがとうよ、だが、愚かだと解っていてもこういう生き方しか出来ないくらいに俺は不器用でな、走ってねえと落ちつかねえんだよ」

 男の皮肉交じりの言葉にグラフィアスはさらに苦笑を深める。

「……まぁいい、場所を変えさせて貰おう、シスター・ケイトがいるここでは窮屈(きゅうくつ)でね」

 グラフィアスは言って突然に消える

 少しの間、静寂(せいじゃく)が流れる。

 ドゴオオオオオオォォォォォォォォ

 突然に凄まじい轟音が静寂を破壊し市街地に巨大な影が現れた。



次へ●第一節⑫ 侵蝕(しんしょく)

前へ●第一節⑩ 白炎(びゃくえん) 

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この記事のコメント
といやッ!
222HITを踏んだでござる。
こういうのって、生まれて初めてでござる。
戦闘シーンが迫力あってすごいでござる。
動きのある描写は苦手でござる;
特にこの口調に意味は無いでござる(((


2007-08-30 Thu 21:09 | URL | ベーコン #a2PHbR9c[ 内容変更] | top↑
地雷を踏んでしまったでござるな(ニタリ
おめでとう(?)でござる。
そして、いつも読んでくれて、まっことにかたじけない^^。

222HITも殴られる(?)とキクでござるな。
これからもこのヘタレに活を入れてやって欲しいでござるよ。



2007-08-30 Thu 21:39 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2007-09-02 Sun 02:21 | | #[ 内容変更] | top↑
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