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アンジェリカ第二節4 葬送(そうそう)
2007-09-22 Sat 20:45
 二日後、姉の葬儀が街の北に広がる墓地で執り行われる。

 空は、姉が死んだことなどまるで意に介さないといわんばかりに晴れ渡っている。

 姉の友人や学校での担任など大勢の参列者が訪れた.

「ウェイン君……」

 声をかけられ僕は振り向くと、そこにはよく知っている顔があった。

「エリックさん」

 僕に話しかけてきたのは姉の婚約者だったエリック=クレイダーだ、彼もまた、父と同じ法務官をしている上、貴族の階級に属している。

「フローラは、本当に……殺されたのか?」

 僕は彼の問いに暫く答えることが出来なかった。

 僕は俯き目を閉じる。

 そう、姉さんは死んだ、もうあの笑顔を見ることも、言葉を交わすことも……出来ない。

 そう思うと、僕の頬を涙が伝った。

「…………はい」

 僕は、重い唇を開き、受け入れなければならない答えをやっと口に出した。

「そんな……何故こんなことに……これから二人で……幸せになろうというこのときに……なぜ……」

 エリックはよろめき倒れそうになる。

「エリックさん!」

 僕は慌ててエリックの体を支える。

「す、すまない……もう大丈夫だよ」

 エリックは言って体を立て直す。

「……私としたことが、取り乱してしまった……」

 エリックは苦笑しようとしたらしかった。

「いえ、お気持ちは、わかります」

 僕は自らの頬を伝っていた涙を拭う。

「そういえば、神父様がまだこられていないようだね……」

 エリックの指摘に僕は辺りを見回すが確かに神父の姿はない。

 そういえば、神父が来るのが遅い。

 参列者と話していた父が話を切り上げこちらに歩いてくる。

「ご愁傷様です」

 エリックが父に声をかけ頭を下げる。

「……エリック君……娘がこんなことになって婚約者の君にも気の毒なことだと思う……」

 父は言ってエリックに頭を下げる

「頭を上げてください、あなたは何も悪くない」

 エリックは慌てて父を宥める。

「そういってもらえると私も少し楽になる……」

 父は言って頭を上げる。

 あの後、父は比較的落ち着いていた。

 だが、恐らく昨日は泣きはらしたのだろう、目は充血しその周りは少し腫れている。

 法が必ず犯人を裁いてくれる、父はそう言った。

 法は必ず正しい者の味方だというのが父の口癖だ。
 僕も、父のその言葉を信じている。

「ウェイン、神父様が遅れているようだ、迎えに行ってくれるか?」

「わかった、行ってくるよ」

 僕は言って教会へと足を向ける。

 しかし、僕はすぐ足を止めることとなった。

 神父とシスターがこちらに歩いてきているのが目に入ったのだ。

 程なく神父とシスターは僕らの許に辿り着く。

「遅れて申し訳ありません、私は四翼聖教で神父をさせていただいておりますホルス=アークと申します、こちらは双子の妹でシスター・アストラ=シェスタ」

「どうも」

神父とシスターは丁寧な物腰で挨拶をする。

神父、シスター、ともに若い。

どちらも二十代になるかならないかといったところで、まるで彫像のように美しい容姿をしている。

「お待ちしておりました、喪主のケイン=ストライフです、本日はどうぞよろしくお願いします」

 父も礼に倣った対応で彼らを迎えた。

 今日び珍しいほど神父の祈りは流暢で堂に入っていた。

 金で僧籍が売り買いされる時代だ、似非といわれても仕方ない神父も山のようにいる、それに比べれば、この神父は若くして大した修行を積んだのだろうと思えた。

 葬儀は滞りなく進み、無事終わりを迎える。

 参列者は姉との別れを惜しみつつも去っていく。

 最後まで残ったのは神父とシスター、父と僕、そしてエリックだ。

 エリックはいまだに姉が埋まっている場所を見つめている。

「すみません、喪主の方とお話したいことがありますので、他の方は席を外していただけますか?」

 神父が僕に申し出てくる。

「あ……はい、それじゃ父さん、僕は先に帰るよ」

 僕はその申し出に少し違和感を感じつつも頷き父に話しかける

「ああ、そうしてくれ」

 父は静かに答える。

「エリックさん、行きましょう」

「……ああ……」

 僕の呼びかけにエリックは答え、僕たちはその場を後にした。
 
「私はここで失礼しよう……」

 分かれ道に差し掛かると、エリックはそう言ってそそくさと僕とは違う方向に歩いていく。

(?、そっちは確かただ墓場があるだけだったような……)

 エリックの後姿を見送りながら僕はそんなことを考える。

「よう、こんなところで会うとは奇遇だな」

 突然かけられた声に振り向くと、そこにはあの白尽くめの男が立っていた。

 相変わらずの死に装束に背負った棺、まさにこの場所に相応しいといえる容貌だ。

「しけた面してるじゃねぇか、どうした?」

「……姉が……殺されたんだ……」

 僕が問いに答えると男は少し驚きの表情を浮かべる

「殺された……そうか、噂の強姦殺人の被害者は、あの姉ちゃんだったか……」

 言わなくても男は察したらしかった。

「数日前に姉さんを襲った奴等の顔を覚えてるなら、証言してもらえないか、姉さんを殺した奴等の手がかりになるかもしれない」

「わりぃが忘れたな、仮に覚えていたとしてもお断りだ」

 僕の頼みを男は無下に断る。

「何故?」

「俺は見た通りろくな育ち方をしてない、あんたらから言わせりゃ犯罪者の部類に入るだろうな、言っとくが俺は人を殺したことだってあるぜ」

 僕の問いに男は答え口の片端を上げる。

「なら、なおさらだ、あんたは罪を償わなきゃならない」

「くだらねぇな、罪だの償いだの、そもそも法なんてのはテメェらの言うところのお偉いさんが、テメェの都合よく拵(こしら)えたもんだろう?、そんなモンに乗っかっていられるほど俺は脳が天気じゃねぇんでな」

 男はさらにその表情に威圧感を付け加え言葉を続ける。

「それに、テメェ等は戦争だの何だのといって法と正義の名の下に、そこらじゅうでさんざ派手に殺しあってるだろうがよ、それに比べりゃ、俺の殺してきた人間の数なんてたかが知れてる」

 男の言葉、それは法に対する侮辱だった

「法は人が人と関わって生きていくための決まりだ、あんたは一人で生きていけるとでもいうのか!?」

 僕は声を荒らげて切り返す。

「俺は法ってやつに庇護していただいた覚えはねぇな、それどころか法も、信仰ってやつも俺を化け物呼ばわりして殺そうとしてきやがった、俺を殺しにかかってきたやつらを殺して何が悪い」

 僕は言い返そうとするが、男の目を見て言葉を飲み込んだ。

 それは、まさに野生に生きるものの眼光というべきものだった。

 今まで僕はこんな目をした人間を見たことがない、それほどに強烈な光を男の目は湛えていた。

「あんたは、頭はいいのかも知れねぇが賢くはないな、少々理想が高すぎだ……いつか、あんたはその信じるものに失望する時が来る、それが明日なのか、十年後なのかは知らねえがな」

 男は言って僕の横を通り過ぎていった。

 僕は、拳を握り締めその背を見送ることしか出来なかった。
 



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この記事のコメント
まさか・・・姉さんが死ぬとは・・・予想外な展開!
 
 しかし、相変わらずマシュウさん・・・。あなたの台詞はかっこよすぎる。何より生き方そのものが渋すぎです。

 だが、それがいい!
2007-09-23 Sun 12:14 | URL | 鳥吉 #026aT6s6[ 内容変更] | top↑
鳥吉 さん
うーん、この辺の展開は賛否が分かれそうです;

マシュウさんの生き様が分かるとは。
やはりあなたは渋さの分かっているお方だ!
ハードボイルド(?)万歳!
2007-09-23 Sun 12:50 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
どもども
読ませていただきました
なんてか、マシュウ様、かっこいい!!
私にはあんなかっこいい男のキャラクターなんてできないっっ
かっこよすぎですよ・・・・
あこがれちゃいますww
2007-09-23 Sun 21:42 | URL | ウィスペル #-[ 内容変更] | top↑
マシュウ、Good!!
なんで彼はこんなにもかっこいいのだろう?
そして、なんで自分はカッコ悪いのだろう?←オタだから
2007-09-23 Sun 23:00 | URL | 紅影死神 #-[ 内容変更] | top↑
うぉ!4を見逃してました!
マシュウさんはもうね、かっこよさ限界突破ですねw∞ですね
そして、私はなんでカッコ悪いのでしょう?←引きこもりだからw
2007-09-23 Sun 23:42 | URL | 蒼月樹 作也 #mQop/nM.[ 内容変更] | top↑
ウィスペルさん
紅影死神さん
蒼月樹 作也さん


皆さん
かっこいいとのお言葉ありがとうございます!
物書き冥利に尽きるの一言。

そして私は何でかっこ悪いんだろう?←引きこもりでオタだからw

げふぁ!(自爆
2007-09-24 Mon 18:53 | URL | 銀蛇 #2Tva8WmY[ 内容変更] | top↑
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